『映像研には手を出すな!』英勉は監督に適任だった? “最強の世界”を実現した3つのポイント
「行こう、最強の世界」
『映像研には手を出すな!』(以下『映像研』)の物語を基に、キャッチコピー通りの実写作品を生み出すならば、英勉監督の起用は最適なのではないだろうか。漫画・アニメ原作の実写作品は後を絶たないが、その評価は賛否が生まれやすい。映画公式サイトでも『「絶対に手を出してはいけない原作」の実写映像化に挑む。』とあるが、『映像研』はアニメ制作に携わる3人の想像の世界や、主人公の浅草みどりの独特な口調など、実写で描くには難しい要素もある作品だ。それでも英勉監督ならば、実写とアニメの垣根を超えた映像作品を生み出してくれると期待している。今回は、英勉作品の特徴から『映像研』のドラマ作品について、3つのポイントから考えていきたい。
1つ目のポイントは映像の表現だ。近年、実写とアニメが逆転しているという声もある。アメリカの大作などでは、役者以外の多くの映像にCGを用いることで、アニメのような派手なアクションや世界観を売りとする作品も増えている。一方で日本のアニメは、京都アニメーションの作品など、日常的な動きや物語を追求し、SFやファンタジー要素の少ない作品も多く生まれている。ストーリーだけを見た場合、どちらがアニメ作品でどちらが実写作品なのか、判断が難しくなっているほどだ。
その中で日本のCGを用いた実写作品の場合は、予算、公開規模、技術の違いもあるアメリカの大作映画と比較されてしまいがちだ。CGのクオリティの違いが、漫画・アニメ原作作品が非難される要因の1つとなっている。しかし、英作品はCGなどの映像技術を実写に取り入れていき、魅力的な映像を作り上げてきた。その一例が『3D彼女 リアルガール』だ。主人公・筒井光が愛好する作中内のアニメキャラクター、魔法少女えぞみちはテレビ画面から飛び出し、イマジナリーフレンドとして話しかける。特に後半では、アニメーションと実写が融合した圧巻の映像を生み出している。CGをリアルで迫力のある映像として見せる方向性だけではなく、アニメーションとしても活用し、実写と融合させる技が光る監督だ。
『映像研』でもその手腕は発揮されている。浅草みどりたちが作り出す、"最強の世界"と呼ばれる想像の世界のCG表現を駆使するほか、線画のようなアニメーション、文字演出などを活用することにより、アニメーションやCGと、実写の融合による映像の面白さを追求している。また、齋藤飛鳥などの役者の可愛らしさや、背景の美しさなどの実写作品の魅力も兼ね備えている。