世間の厳しい目を跳ね返す? ドラマ版『映像研』がもたらしたキャラクタードラマの可能性

『映像研』にみるキャラクタードラマの可能性

 先週スタートした連続ドラマ『映像研には手を出すな!』(MBS/TBS、以下『映像研』)は、芝浜高校というダンジョンのような学校を舞台に、浅草みどり(齋藤飛鳥)、金森さやか(梅澤美波)、水崎ツバメ(山下美月)の三人の女子高生がアニメを作るために映像研究同好会を立ち上げる話だ。

 原作は『月刊!スピリッツ』(小学館)で連載されていれる大童澄瞳の漫画。今年の1月に湯浅政明監督によるアニメシリーズがNHKで放送され、絶大な支持を受けていただけに、その直後に始まるドラマ版は厳しい勝負になるだろうなぁと、思っていた。それでなくても人気漫画の実写映像化に対して世間の目は厳しい。しかも、本作は乃木坂46の3人が主演を務めるアイドルドラマ(アイドルドラマに対する目も世間は厳しい)でもあり、先行して発表されたポスターのビジュアルを見ても(漫画の浅草や金森とくらべて)かわいすぎるのではないかと思っていたのだが、はじまったドラマはそういった不安要素を全部跳ね返した上で、漫画ともアニメとも違う実写映像だからこそできるセンス・オブ・ワンダーに溢れた作品に仕上がっていた。

 変な言い方になるかもしれないが、「ついに実写映像でも、ここまでアニメがやれるようになったのだ」と感慨深かった。

アニメ『映像研には手を出すな!』(c)2020 大童澄瞳・小学館/「映像研」製作委員会

 アニメ版『映像研』は完璧だった。アニメを作る女子高生たちの話をアニメで作り、作中には浅草が考えた設定画やツバメが考えたキャラクターが登場するのだから、本作にもっとも適した映像表現がアニメであることは疑いようがない事実だろう。アニメという表現を通してアニメの魅力を解説していく手法も「これしかない」という感じで、まさにアニメによるアニメ賛歌だったと言える。

 対してドラマ版『映像研』は、生身の俳優とCGを組み合わせることで、アニメや漫画の持つ魅力にどこまで肉薄できるのか?という勝負に全力で挑んでいる。これは技術的な意味だけでなく「漫画だなぁ」とか「アニメだなぁ」という言葉に内包される「荒唐無稽な物語」を実写で作るという意味も含まれる。よりわかりやすく言うと、実写で『未来少年コナン』や『ルパン三世 カリオストロの城』といった宮崎駿のアニメが作れるのか?という挑戦だ。そう考えると、一見無駄に見える応援部や生徒會直属の警備部が出てくるごちゃごちゃとした場面も納得できる。おそらくあれは宮崎駿のアニメに出てくるモブシーンの再現だ。

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