リュ・ジュンヨルが悲惨な目に遭いまくる! 『啓示』で炸裂した“悲劇のピタゴラスイッチ”

『啓示』で炸裂“悲劇のピタゴラスイッチ”

 韓国映画名物“悲劇のピタゴラスイッチ”が炸裂! 現在Netflixで配信中の『啓示』(2024年)は、トントン拍子に人間がどん詰まりにハマっていく様子と、そこでさらに“こう”(両手を顔の側面につけてから、前に伸ばして、視野が狭くなるポーズ)なってしまう姿を楽しめる1本だ。

 さびれた教会を切り盛りする牧師(リュ・ジュンヨル)は、今日も信仰を胸に一生懸命に生きている。しかし妻の浮気が発覚し、探偵から「行為中の動画とかも撮れると思いますが、どうします?」と打診され、気分はもう最悪。おまけに近所には巨大な教会が完成し、そこを取り仕切る役を任されると思ったら、親の七光パワー全開の後輩に奪われてしまった。ドン底気分の中で、妻から子どもの送迎を頼まれるも、上の空になってしまい……その隙を突くかのように子どもが行方不明に。ますます“こう”なってしまった牧師は、近所に住んでいる性犯罪の前科者が何かをやったに違いないと追いかけるが、その行動がさらなる“不幸のピタゴラスイッチ”を招いてしまい……。

 監督を務めたのははヨン・サンホ。『新感染 ファイナル・エクスプレス』(2016年)で国際的な名声を手に入れ、近年は『地獄が呼んでいる』(2021年)や『寄生獣 ーザ・グレイー』(2024年)など、ウェブトゥーンや日本のマンガやの映像化で活躍している。本作も韓国のウェブトゥーンの実写化で、その手腕を存分に発揮している。役者陣に目を向ければ、主要登場人物は3人いる。実質、3人が3人とも主役級であり、本作はそれぞれの物語とも言えるのだが……MVPはリュ・ジュンヨルだろう。

 リュ・ジュンヨルといえば、『毒戦 BELIEVER』(2018年)の謎めいた青年役や、『梟-フクロウ-』(2022年)の盲目の鍼医など、数々の映画で見事な演技を披露し、観客を魅了してきた人物だ。もちろん今回も全開である。牧師として真面目一本で生きているのに、悲惨な目に遭いまくって狂っていく人物を見事に演じ切っている。

 本作のキーワードは題名にもなっている「啓示」だ。ジョンヨルさん演じる牧師は、人生がノーリターンになる瞬間に、なぜか不思議と神様っぽいビジュアルを見てしまう。それは雨で滲んだ印刷物だったり、風景だったり、空模様だったり……とにかくキリストや悪魔といった、何らかの宗教的な啓示が目に入るのだ。ただでさえ“こう”なりやすいキャラなのだが、そのせいでますます悪化し、むしろ自分は神様に導かれているという変な自信を持つようになってしまう。やらかした後に「自首 刑期」などで検索をかける小市民の姿から、完全な狂信者と化して、信者相手に大演説をぶちかますまでの変貌が素晴らしい。ちなみに啓示その物の絶妙に胡散臭いビジュアルも非常にいい感じで、さすが特殊効果に強いヨン・サンホである。

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