ポン・ジュノは初めからポン・ジュノだったーー『パラサイト』でアジア映画初の偉業を果たすまで

ポン・ジュノ監督の凄さを過去作から紐解く

 唯一の問題は、ポン・ジュノ監督がアメリカで名声をつかむまで、やはりあまりにも長くかかりすぎたということだろう。獲るのなら、もっと前に獲れたはずなのだ。その考え方でいくと、今日の快進撃は、“奇跡”というよりは、むしろ、ここまであからさまな才能を長年認知できなかった、もしくは正当に評価できなかった側に落ち度があるのではないか。『パラサイト 半地下の家族』は、その意味で私を含めた、ファナティックな一部のファンにとっては、嬉しい反面、少し複雑な気持ちになる人気作でもある。

第92回アカデミー賞で作品賞を受賞した『パラサイト 半地下の家族』一同 Blaine Ohigashi / (c)A.M.P.A.S.

 だが、どういう立場であれ共通するのは、ポン・ジュノの次回作が楽しみだという期待を、みんなが持っているということだ。ここまで短期間で一気に注目され、期待された映画監督が、あらゆる意味で圧倒的な力を得て、次に何を描くのか。その凄まじい才能がどこにたどり着くのか。これ以上に刺激的なことが、いまの映画界に他にあるだろうか。

■小野寺系(k.onodera)
映画評論家。映画仙人を目指し、作品に合わせ様々な角度から深く映画を語る。やくざ映画上映館にひとり置き去りにされた幼少時代を持つ。Twitter映画批評サイト

メイン写真:Blaine Ohigashi / (c)A.M.P.A.S.

■公開情報
『パラサイト 半地下の家族』
TOHOシネマズ 日比谷ほかにて公開中
出演:ソン・ガンホ、イ・ソンギュン、チョ・ヨジョン、チェ・ウシク、パク・ソダム、イ・ジョンウン、チャン・ヘジン
監督:ポン・ジュノ
撮影:ホン・ギョンピョ
音楽:チョン・ジェイル
提供:『パラサイト半地下の家族』フィルムパートナーズ
配給:ビターズ・エンド
2019年/韓国/132分/2.35:1/英題:Parasite/原題:Gisaengchung/PG-12
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