パートナーでオスカー像を争う! N・バームバック×G・ガーウィグの“自伝”にとどまらない豊かな創造性

N・バームバック×G・ガーウィグの作家性

各作品に見られる、表現者同士のリスペクト

 両者の与える影響からは、表現者として互いにリスペクトを向け合う二人の姿勢が見受けられる。

 『マリッジ・ストーリー』はバームバックの単独監督・脚本作となっているが、脚本執筆においてガーウィグの助言はあったかと問われ「助言なんてものじゃない。僕が手がけた映画には、彼女発の台詞がいっぱいだ。彼女が何か言ったり書いたりするたびに“それ使ってもいいかい?”と聞くんだよ」と答えた。

Netflix映画『マリッジ・ストーリー』独占配信中

 また過去に「映画監督は孤独であるために、大変な職業だ。マイク・ニコルズは、監督には良き仲間が必要だと言ったけど、その通りだよ」と語ったが、自身のパーソナリティを見つめる孤独な作業とともにウェス・アンダーソン、そしてガーウィグといった“良き仲間”の声を聞き、視野を拡げ、創作に活かすバームバックによる表現者としての柔軟性がうかがえる。

 ガーウィグも、『若草物語』の製作背景について「彼と私が与え合う影響を作品の中に見ることはとてもエキサイティングな経験」「彼の作品であっても自慢したくなることがある。『レディ・バード』や『若草物語』でもラッシュ段階のものを彼に見せていたんだけど、それは彼が私の一番好きなフィルムメイカーだから」と答えて尊敬の念を表した。

『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』

 それぞれの最新作でともにオスカー像を争う二人は、『スキャンダル』において同賞で助演女優賞候補となっているマーゴット・ロビー主演作『Barbie(原題)』の共同脚本で再びコラボレートすることがアナウンスされている。

 影響を与え合いながらユニークな作家性を拡げている監督パートナーが世界中から愛されるアイコニックな存在・バービー人形の姿を通じ提示する物語の行方に、早くも期待が高まる。

参照:

https://www.nytimes.com/2017/11/01/magazine/greta-gerwigs-radical-confidence.html
https://www.theguardian.com/film/2013/jul/13/greta-gerwig-frances-ha
https://www.hollywoodreporter.com/features/greta-gerwig-noah-baumbach-are-making-history-oscars-season-1261857
https://www.theguardian.com/film/2019/dec/01/noah-baumbach-marriage-story-divorce-hope
https://youtu.be/4iLtjMwkOlg

■菅原 史稀
編集者、ライター。1990年生まれ。webメディア等で執筆。映画、ポップカルチャーを文化人類学的観点から考察する。Twitter

■公開情報
『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』
3月27日(金)全国ロードショー
監督・脚本:グレタ・ガーウィグ
原作:ルイザ・メイ・オルコット
出演:シアーシャ・ローナン、ティモシー・シャラメ、フローレンス・ピュー、エリザ・スカンレン、エマ・ワトソン、ローラ・ダーン、メリル・ストリープ
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
公式サイト:storyofmylife.jp
公式Twitter:https://twitter.com/SPEeiga
公式Facebook:https://www.facebook.com/SPEeiga

■配信情報
Netflix オリジナル映画『マリッジ・ストーリー』
全世界独占配信中

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「映画シーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる