実写ドラマ、ショートアニメがともに好調 『ゆるキャン△』の魅力を改めて振り返る

 女子高生がキャンプを通してアウトドアをゆるやかに楽しむ姿を描く「女の子×キャンプ」の人気日常系アニメ『ゆるキャン△』。ここにきて、ショートアニメ『へやキャン△』や福原遥主演のドラマ『ゆるキャン△』(テレビ東京系)として放送され、魅力が再確認されている。ということで、アニメ『ゆるキャン△』の魅力を再び掘り下げてみたい。改めて視聴してみると、そこには京極義昭監督の精緻な描写と仕掛けがふんだんに盛り込まれた作品であるということに気づかされた。

『ゆるキャン△』1巻(c)あfろ/芳文社

 冬に一人キャンプをすることが趣味の女子高生・志摩リンが、ある日富士山の麓でキャンプをしていると、道に迷い遭難していた各務原なでしこと出会う。そこでなでしこは凛と佇む富士山を見たことで野外キャンプの魅力に惹かれ、野外活動サークルに入ることを決意。一人キャンプを楽しむリンと、野外活動サークルで集団キャンプを楽しむなでしこの2つの視点でキャンプの魅力が多面的に描かれていく。

 かといって、最後までリンとなでしこは共存しえないというのは本作の面白いところ。作中でリンとなでしこら野外活動サークルが一緒にキャンプを楽しむ場面はあるものの、それはリンにとって本来の楽しみ方から外れた特別なものにすぎず、終始一人キャンプを嗜好としていることは一貫している。単にキャンプを通した仲間との成長物語、というわけではないところが本作をより魅力的なものにしている。

 ところで、アニメ版の魅力を語る上で外せないのが監督である京極義昭だ。Production I.G出身の京極監督は、『黒子のバスケ』や『ヤマノススメ セカンドシーズン』といった作品で演出を手掛け、『ゆるキャン△』で自身初の監督を務めた。現在放送中の『へやキャン△』でもスーパーバイザーとして作品に携わっている。

 京極監督は、スタジオジブリ作品に影響を受けていることから背景へのこだわりがいくぶん強い。制作にあたり京極監督は何度もロケハンを重ね、実際にキャンプを体験することから始めたと過去のインタビューで語っている。本作では背景が作品中でリンとなでしこをつなぐ要素として描かれるため、その位置づけはかなり重要だ。原作の見開きいっぱいに使った背景描写の見せ方を踏襲しつつも、冬のピリッと澄み切った空気感すらも醸し出しており写実的な再現性はかなり高い。にもかかわらず、日常系アニメらしいゆるい雰囲気を至るところに残している。

 また、音へのこだわりも入念だ。京極監督は「キャラクターではなく情景に音楽をつけた」とも語っている。日常系アニメではドラマティックな展開はまず起こらないために、音楽へのアプローチ法はそれ以外のアニメとは異なる。京極監督は作中に登場するキャンプ場ごとにテーマソングを割り当て、キャンプ場の特徴にあわせた音楽を用いることで、日常の中に強弱をつけ、ある種の特別感を演出している。

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