深夜ドラマがプライム帯ドラマを超える? 80年代からの傾向と新風の予感

バラエティ豊かな深夜ドラマの勢い

 2020年となり、早くも冬クールのドラマがはじまろうとしているが、注目すべきは深夜ドラマの豊富さだろう。

 「深夜ドラマの顔」と言えるテレビ東京では、視聴者参加型の実験ドラマ『100文字アイデアをドラマにした!』、中島裕翔×間宮祥太朗主演の異能力バトル『僕はどこから』、内田理央主演の赤裸々ラブエロコメディー『来世ではちゃんとします』、福原遥主演のゆるゆる系ガールズキャンプドラマ『ゆるキャン△』、古舘寛治×滝藤賢一主演の人間賛歌コメディー『コタキ兄弟と四苦八苦』、濱津隆之主演のグルメドラマ『絶メシロード』の6作が放送。

 他局でも、日向坂46主演、秋元康企画の学園ドラマ『DASADA』(日本テレビ系)、NHKのよるドラ枠で、前田敦子主演の異世界を舞台にした子育てRPG物語『伝説のお母さん』などが放送され、地方局制作ドラマや、BSやNetflix等で放送されたものが深夜ドラマ枠で放送されるケースも含めると、優に20本を超えるのではないかと思う。

 この本数はプライムタイムで放送されている連続ドラマとほぼ同じ数だが、いずれ深夜ドラマの本数の方が上回ることは確実だろう。

深夜ドラマ枠はクリエイター発掘の場

『フルーツ宅配便』(c)テレビ東京

 元々、深夜ドラマは若い脚本家やディレクターが、プライムタイムでは作れない先鋭的な作品を作る実験の場だった。中でも一番積極的だったのが、80年代後半から90年代前半にかけてのフジテレビで、そこから三谷幸喜、本広克行、岩井俊二といった後に映画やドラマで活躍するクリエイターが巣立っていった。

 それが00年代に入り金曜ナイトドラマで『トリック』(テレビ朝日系)がヒットしたあたりから状況が変わっていき、深夜ドラマだけの独立した文化圏が成立するようになっていく。

 作り手の顔ぶれも独創的だった。深夜ドラマではテレビ局員ではない外部の映像制作会社のディレクターや映画監督が監督を務めることが多く、小規模だが作家性の強いドラマが多数作られるようになっていった。その筆頭が“深夜ドラマ番長”と呼ばれた大根仁監督だ。2010年に大根が全話の脚本・演出を担当した『モテキ』(テレビ東京系)は、作家性の強い深夜ドラマの一つの到達点であり、それ以降、山下敦弘、白石和彌、園子温、入江悠といった力のある映画監督が深夜ドラマを手掛ける機会が増えていった。

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