笠松将が語る、主演映画『花と雨』における覚悟  「退路を断った。逃げ道がなくなった」

笠松将が語る、主演映画『花と雨』における覚悟  「退路を断った。逃げ道がなくなった」

 ヒップホップ界のレジェンド・SEEDAによる名盤『花と雨』を原案とした同名映画で主演を務める笠松将。彼は数多いる若手俳優の中でも、近年もっとも強烈な輝きを放っている一人に数えられるだろう。笠松が演じるのは、主人公の吉田(=SEEDA)。吉田という人物の持つ内面性と、笠松本人がうちに秘める闘志といった精神性は重なって見える。

 笠松に、『花と雨』で主演を張るという覚悟や撮影秘話、公開を目前に控えた現在の心境などについて話を聞いた。

映画『花と雨』笠松将インタビュー【リアルサウンド映画部】

「完成する作品を見るまではすごく怖かった」

ーー笠松さんにとって、2020年最初の主演作が『花と雨』になります。

笠松将(以下、笠松):撮影は2018年に行い、1年以上この作品と向き合ってきました。ラップの練習や、オーディションも含めると2年近くになります。僕は以前から「作品の質を上げられる俳優」になれるといいなと思っていたんですが、一方でこの言い方をすることで、ある種どこかで逃げていました。でもこの作品と出会ってからは、やっぱり自分が面白いと思ったものは共感して欲しいし、その為には僕自身が見てもらえる立場だったり、注目される人にならないといけない。そしてその作品を観る人の期待を裏切りたくないと。以前取材していただいたとき(参考:笠松将、初めて明かす“役者”への思い 「1番になるまでは絶対にやめられない」)に「1番になりたい」と言いましたが、そういう発言が出るようになったのも『花と雨』に出会ってからのことです。この作品と出会って、作品の背負い方、これから自分が「俳優」とどう向き合っていくかという覚悟は大きく変わりました。退路を断った。逃げ道がなくなったんです。

ーー「退路を断つ」というのは、本作の吉田にも近しいものを感じます。

笠松:リンクさせようという気はありませんでしたが、確かにそうかもしれないですね。別の作品をやっている間も、カバンの中にずっと入っているのは『花と雨』の台本でした。当時は脳みそが勝手に、僕が吉田を演じる上で必要な情報を探してくれていたんですよ。意識してはいなかったですけど、そういう情報をいっぱい拾って、僕の中に貯金していたのかもしれません。

ーーオーディションで、主人公のラッパー・吉田役を射止めたそうですね。

笠松:はい。ラップは審査基準に一切なかったらしく、純粋に芝居だけを見て役者を選んだと聞きまさした。僕の場合は、台本2ページくらいの二人芝居を1度して終わってしまったんです。そのとき、もちろん自分にも非はあるのですが、相手役の方と呼吸があわなくて、思ってたパフォーマンスができなかった悔しさがありました。これだけしかチャンスが無かったから、受からないなと半ば諦めてたら主役に決まったので驚きました。しかも、もともと僕が受けていたのは主役のオーディションではなかったんです。

ーーそうなんですか?

笠松:僕にはビジュアルの部分など、吉田というキャラクターに必要な要素があまりにも足りなかったんですた。主役のオーディションを受けるには条件がいくつかあって、それに僕は一つも当てはまっていなかったんです。でも、もともと『花と雨』というアルバムもSEEDAさんというラッパーも好きでしたし、こういう音楽や文化から自分はたくさん力をもらったので、“恩返し”というとおこがましいですが、どうしても携わりたかったんです。

 主役以外のメインのキャストも全てオーディションで決めるということだったので、「とにかくいい役を取れるように頑張ろう」と思っていたんです。まさか主役に決まったとは、オーディションの感触からして思いもしませんでした。ちょうどそのとき、伊豆諸島の新島で映画『おいしい家族』の撮影をしていて、その現場で仲良くなった俳優の浜野謙太さんや、柳俊太郎くんに報告すると、「絶対に観るよ」と言われて嬉しかったです。ところが、東京に帰ってきて一人でポツンとなったときに、いざ『花と雨』のアルバムを改めて聴いて観ると、一気に怖くなりました。SEEDAさんは絶対的なレジェンドだし、これまで実在する人を演じることもなかったし、『花と雨』というアルバム自体が本当に好きな人もいるわけです。それを僕がやるというのはリスキーだし、下手したら僕自身が終わりへの道に向かうことになるかもしれないと思ったりもしました。だから完成した作品を観るまではすごく怖かったです。

ーーいざ現場に入ってみて、いかがでしたか?

笠松:あんなにいろんな人のことを覚えている現場はなかなかないです。監督もそうですし、技術部の方や制作部の方、もちろん、俳優部の共演者もそうです。毎日みんなと顔を合わせる撮影ではなかったのですが、みんなが少しずつ僕に力をくれて、カメラの前に立つことができました。だからここからは僕が、この作品自体もそうだし、俳優部、スタッフの方も守りたい。それだけのことをみんながしてきたし、この作品にはそういう思いが詰まっているんです。これまでに自分がこの作品に与えられたことは本当になくて、もらってばかりでした。

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