小瀧望が科学で恋愛を証明? 『決してマネしないでください。』は“理系あるある”の宝庫に

 高科教授のもと、男だけの研究室で日々議論と実験に励む掛田たちにリア充要素は皆無。医学部の学生と参加した合コンでも、コミュ障ぶりを存分に発揮する“キモい”理系男子たちだが、実験に打ち込む姿はとてもピュアである。初めての恋に右往左往し、全力で立ち向かう様子にはいとおしさすら覚える。また、掛田の気持ちを知ってか知らないでか、すぐ近くで見守る飯島さんの目線には優しさがあり、作品全体にピースフルな空気が漂っている。

 一方で、「とにかくとがっていくことを意識した」と制作スタッフが語っているように、振り切ったストーリー展開と演出によって、本作は知的なスラップスティック作品に仕上がっている。また、原作再現度の高さは、本作の見どころのひとつ。よく現実離れしたエピソードを“マンガみたいな話”と言うが、ありえなそうな発想を科学的に検証し、実際にやってしまうのが『決してマネしないでください。』の秀逸な点だ。ドラマでも「映画で火だるまになっているスタントマンはヤケドしないのか」という疑問を検証するなど、映像化されることでいちだんと説得力を増して迫ってくる。

 ストーリーの随所に歴史上の人物や偉大な科学者の語りが挿入されるのもポイントだ。近代化学の父とされるラヴォアジエなど、歴史ドラマでもなかなかお目にかかれないレアキャラが続々と登場する。扮するのは高科ゼミの面々。出演者が一人二役で演じる気合いの入ったコスプレにも注目したい。

 そもそも恋愛と科学は食い合わせが悪いようにも思えるが、真実を追求するあまり時に過剰な行動を招いてしまう科学と、盲目に突っ走る恋愛は決して矛盾するものではない。『決してマネしないでください。』は、理工系学部の出身者にとっては理系あるあるの宝庫であり、現役学生はもちろん、科学に関心のない人も楽しんで見ることのできる内容だ。掛田の思いはどのように実を結ぶのか。ぜひまっさらな気持ちで見てもらいたい。

■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京辺境で音楽やドラマについての文章を書いています。ブログtwitter

■放送情報
よるドラ『決してマネしないでください。』
NHK総合にて、10月26日(土)スタート 毎週土曜 23:30〜(29分・全8回)
出演:小瀧望(ジャニーズ WEST)、馬場ふみか、ラウール(Snow Man/ジャニーズ Jr.)、今井悠貴、マキタスポーツ、石黒賢ほか
原作:蛇蔵『決してマネしないでください。』
脚本:土屋亮一、福田晶平、鎌田順也
制作統括:谷口卓敬(NHK)、八木亜未(大映テレビ)
演出:片桐健磁、榊英雄
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/drama/yoru/ketsumane/

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