「平成バラエティ史」を振り返る【後編】ーー時代を味方につけたテレビ東京が主役的存在に躍り出る

「平成バラエティ史」を振り返る【後編】ーー時代を味方につけたテレビ東京が主役的存在に躍り出る

散歩番組が確立した「ユルさ」の魅力

 『ブラタモリ』もそうだが、いま散歩番組が全盛だ。散歩番組は旅番組の一種と言えるが、有名観光地巡りではなく日常的な街の風景のなかでの人びととの交流がメインな点で、従来の旅番組とは一線を画す。いまや散歩番組は、ひとつの独立した番組ジャンルになった感がある。

 先駆的番組としては、1995年に始まったNHK『鶴瓶の家族に乾杯』が挙げられるだろう。笑福亭鶴瓶とゲストが毎回、全国どこかの街を訪れ、地元の人びととふれあう。「ぶっつけ本番の旅」とわざわざ番組最初に出るように、偶然の出会いが生む感動や笑いが最大の魅力になっている。

 この番組の鶴瓶を見てもわかるように、相手の人柄を引き出すことが肝になるこうした番組では、自ずとコミュニケーション術に長けたお笑い芸人が起用されることが多い。鶴瓶以外にも、有吉弘行、タカアンドトシ、サンドウィッチマンなどがメインの散歩番組が、現在各局で放送されている。

 そうした番組の代表格と言えるのが、2007年にスタートしたテレビ東京『モヤモヤさまぁ~ず2』である。さまぁ~ずの二人がテレビ東京の女性アナウンサーとともに毎回ひとつの街をぶらぶら歩きしながら、地元の人びとと交流する。

 『モヤさま』の特徴は、「ユルさ」である。初回で訪れたのが、新宿ではなく北新宿であったことなどがまず象徴的だ。流行の店や人気スポットがある定番の街ではなく、そこから少しずれたところを敢えてチョイスする。そこで出会う地元の人びともテレビ的なお約束には無頓着で、自分たちの普段着のままの姿勢を崩さない。さまぁ~ずとのやり取りも、芸人同士による丁々発止のボケとツッコミの応酬のようなかっちりしたものとは異なり、どこか微妙にずれていたりする。だが逆にそのずれが醸し出す「ユルさ」がガチ感となって、独特な笑いが生まれる。

平成はテレビ東京の時代

 定番から絶妙に外れたところに新しい価値を見出す。それは、テレビ東京そのものの方法論でもあった。

 テレビ東京が在京キー局としては最後発で、予算面なども十分ではなかった事情からやむを得ずそうなった面もある。ただ、定番に頼らない徹底したアイデア勝負のスタンスが、昭和のテレビから脱却し、新しいものを模索していた平成のテレビにうまくフィットした。そうして時代を味方につけたテレビ東京は、平成のバラエティを担う主役的な存在に躍り出た。その意味で、平成はテレビ東京の時代だったとも言える。

 たとえば、太川陽介と蛭子能収のコンビでシリーズ化された『ローカル路線バス乗り継ぎの旅』(2007年放送開始)などは典型的だ。旅番組の定番を離れ、地元で走っている路線バスだけを乗り継いで期限内に目的地にゴールするというアイデアがまず見ていて面白い。そこに地元の名産には目もくれずどこでも自分の好きなカツ丼やカレーを食べる蛭子さんのユニークなキャラクターなども加わり、局の看板人気番組になった。

 ほかにもテレビ東京のアイデア勝負の成功例として、大食いブームを巻き起こした『TVチャンピオン』(1992年放送開始)や一般人に密着する『YOUは何しに日本へ?』(2012年放送開始)、『家、ついて行ってイイですか?』(2014年放送開始)などの素人をフィーチャーした番組がある。また鉄道沿線の街を空撮した映像がナレーションとともに延々と続くだけの『空から日本を見てみよう』(2008年放送開始)なども、そうだろう。

 こうしたテレ東的アイデア勝負の手法は、いまやテレビ全体に広まりつつある。衛星画像からポツンと存在する一軒家を発見し、そこに暮らす人たちを訪ねて取材する『ポツンと一軒家』(テレビ朝日系、朝日放送テレビ制作)が大河ドラマや人気バラエティ『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ系)と同じ時間帯で堂々と高視聴率を挙げているのは、その好例である。

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