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「平成バラエティ史」を振り返る【後編】ーー時代を味方につけたテレビ東京が主役的存在に躍り出る

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『チコちゃん』の成功が教えるバラエティの可能性

 その点は、NHKも例外ではない。たとえば定番外しの手法は、前編の冒頭でふれた『チコちゃんに叱られる!』(NHK/以下、『チコちゃん』)にも見受けられる。いやむしろ、そうした定番外しの要素を巧みに織り交ぜたのがこの番組の魅力であり、そこに世代を問わず視聴者を飽きさせない理由もあるだろう。

 基本フォーマットはクイズ形式の教養バラエティで、これまでも同じジャンルの人気番組がなかったわけではない。だが『チコちゃん』で特に見逃せないのが、随所に凝らされたエンタメとしての工夫だ。

 チコちゃんの声がお笑い芸人・木村祐一で、5歳という設定を無視したような大人の会話もお構いなし、という意外性たっぷりな部分もそうだろう。ニュース番組の印象が強くお堅いイメージの森田美由紀アナが淡々とした口調で「毒」を吐くナレーションにもつい笑いを誘われる。また答えの解説VTRも、有名俳優を使った再現ドラマにいきなりなってみたり、取材が上手くいかなかったことをスタッフが自虐的にばらしたりするなど、ありがちな形式にせずあえてユルく作っている様子がうかがえる。

 そして究極には、この番組自体がNHKの定番外しの産物でもある。『チコちゃん』の元々のアイデアは、かつてダウンタウンやウッチャンナンチャンの番組の演出などを手がけ、1990年代以降のフジテレビバラエティを支えたひとりである小松純也(当時は番組制作プロダクション・共同テレビジョン所属、現在はフリー)によるものである。その意味では、岡村の存在と併せ、『チコちゃん』というバラエティは、NHKとフジテレビのハイブリッドと見ることができる。

 『めちゃイケ』だけでなく、『SMAP×SMAP』や『とんねるずのみなさんのおかげでした』といった長寿バラエティのここ数年での終了を受けて、1980年代以来バラエティをリードしてきたフジテレビの時代の終焉を指摘する声は少なくない。またコンプライアンス意識の高まりから、従来のバラエティのありかたが再考を迫られていることも確かだ。しかし、『チコちゃん』が示すように、フジテレビが築いたバラエティのエッセンスは思わぬところで受け継がれ、ヒット番組を生んでもいる。そこに来たるべき時代の新しいバラエティの可能性も潜んでいるに違いない。

■太田省一
1960年生まれ。社会学者。テレビとその周辺(アイドル、お笑いなど)に関することが現在の主な執筆テーマ。著書に『SMAPと平成ニッポン 不安の時代のエンターテインメント』(光文社新書)、『ジャニーズの正体 エンターテインメントの戦後史』(双葉社)、『木村拓哉という生き方』(青弓社)、『中居正広という生き方』(青弓社)、『社会は笑う・増補版』(青弓社)、『紅白歌合戦と日本人』『アイドル進化論』(以上、筑摩書房)。WEBRONZAにて「ネット動画の風景」を連載中。

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