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舞台『熱海殺人事件 LAST GENERATION 46』レポート

今泉佑唯が踏み出した芝居の世界ーー『熱海殺人事件 LAST GENERATION 46』の「歴史」と「熱」

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 新宿・紀伊國屋ホールにて上演中の『熱海殺人事件 LAST GENERATION 46』。つかこうへいが1973年に発表した本作は、46年経ったいまなお人々に愛され、全国各地で上演が続いている。その中でも、紀伊國屋ホールは本作のメッカだ。これまでにも多くのつか作品の演出を手がけてきた岡村俊一によって、味方良介、今泉佑唯、佐藤友祐(lol-エルオーエル-)、石田明(NON STYLE)らの熱き役者魂とともに、血湧き肉躍るものに仕上げられている。また本作は、昨年11月に欅坂46を卒業し、本格的な女優活動を開始した今泉の初舞台でもあり、早くから大きな注目を浴びていた。すでに大阪での公演は終え、このメッカでの公演を、座組が一丸となって駆け抜けているところなのである。

 舞台は東京警視庁のとある捜査室。木村伝兵衛部長刑事(味方)とその部下である水野(今泉)のもとに、立身出世を目論む刑事・熊田(石田)が富山から着任する。そこで、同郷の女性・山口アイコを熱海で絞殺した疑いをかけられている、大山(佐藤)の取り調べがはじまるのだ。

 チャイコフスキーの『白鳥の湖』が劇場内に響き渡り、やがて大音量へとなるのに合わせて素早く緞帳が上がる。舞台上をスモークが満たし、そこには、電話片手にがなり立てる木村の姿があった。歴史ある本作のお約束の演出である。もちろん木村の声は、この歴史ある演出で使用される、歴史ある楽曲にかき消されている。この「歴史」と、若き俳優たちとの戦いの幕開けに、客席に座る私たちの体温は上昇し、鼓動が高鳴っていく。こんな緊張感が終始持続するのが、本作の醍醐味である。舞台上の彼らの「熱」は客席にも拡がり、演者と観客のへだたりは溶け、客席は安心安全な場ではなくなるのだ。

 本作で主人公・木村を演じ、座長を務めるのは、これで3年連続で同役に挑むこととなった味方良介。2.5次元ミュージカルから、つか作品まで、縦横無尽に活躍する演劇界の若き匠である。見事な体幹はずしりと舞台に据えられながらも、しなやかな身のこなしで他を圧倒。射抜くようなまなざしと声の強さは、物語の登場人物たちだけでなく、観客である私たちのことをも同時に射抜く。座長として文句なしの、桁違いのスケールの大きさである。

 富山の田舎に恋人を残し、はるばる上京してきた熊田刑事を豪快に演じるのは石田明だ。彼がお笑いタレントであることは広く知られているが、近年は演劇作品での活躍も目覚ましい。この熊田役には昨年に続き連投することとなったが、味方と同様、そのパフォーマンスを目にすれば、なぜ彼が続けて起用されるのかが判明する。彼の演技はまさに“ノンスタイル”。お笑いが原点にあるからか、一つの役を立ち上げるだけでなく、観客を巻き込んで一緒に作品を作っていくという姿勢が印象深い。

 ダンス&ヴォーカルグループ・lol-エルオーエル-のメンバーでもある佐藤友祐が演じるのは、犯人・大山金太郎。捜査の対象となる人物とあって、彼が登場することで物語は駆動する。彼の登場は他の者よりもだいぶ遅く、すでに出来上がっている劇場の空気を壊す/壊さないように振る舞わねばならないという重責を負っている、一筋縄ではいかない役どころだ。しかし普段から演技だけでなく、歌にダンスにと取り組んでいるだけあって、相当なポテンシャルが垣間見える。彼が悲痛な叫びを上げる場面ではすべての視線を一手に受け、大器の予感を漂わせた。

      

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