戸田恵梨香、有村架純、松本穂香、徳永えり……時代を席巻する「フラーム」の女優たち
そんな一時代を築く、戸田、有村に後続する存在として、いま多方から熱い注目を浴びているのが松本だろう。昨年は『この世界の片隅に』(TBS系)のオーディションで主役を射止め、同作は彼女の代表作となったが、それ以外の作品では脇から支える立ち位置を担っていた。だが今年は、『おいしい家族』で長編映画初主演を飾り、『酔うと化け物になる父がつらい』と、主演作の公開が続く。さらには『きみと、波にのれたら』で声優に初挑戦。作品の顔になることや、声だけの表現の世界に踏み込んでいくことで、彼女の力量が試されることとなりそうだ。
さて、「フラーム」といえば、彼女たちの少し上の世代もかなり手強い布陣となっている。“ヒロスエブーム”という、文字通り一時代を築き上げた広末涼子に、昨年『ブラックスキャンダル』(読売テレビ・日本テレビ系)で満を持してドラマ初主演を務めた山口紗弥加、このところ少し活動が落ち着いた印象もあるが、登場すれば必ずや場をさらう吉瀬美智子といった存在が顔を揃えているのだ。数多くの作品において、彼女たちがバイプレーヤー的なはたらきをすることは、優秀な若手輩出の一翼を担う側面もあるだろう。
さらに、気鋭の映画監督・二宮健による挑戦的な全編アドリブ映画『疑惑とダンス』に出演した徳永えり、福田麻由子も「フラーム」の女優だ。作品そのものもそうだが、配給を「フラーム」が担当しているとあって、上映は連日華やかなお祭りの様相を呈していた。徳永は昨年夏季クールの『恋のツキ』(テレビ東京系)で連ドラ初主演をしており、子役出身で若くして長い芸歴を誇る福田は、間もなく公開の映画『ラ』でヒロインを務め、『スカーレット』への出演も決まっている。彼女たちからも目が離せない。
そして、『寝ても覚めても』(2018)と『覚悟はいいかそこの女子。』(2018)という、まったくタイプの異なる作品でヒロインを演じ、大舞台へ登場することとなった唐田えりかの存在も大きな話題を呼んでいる。新たなる時代の到来を予感させるオムバス映画『21世紀の女の子』において、その指揮を執る山戸結希の監督作『離ればなれの花々へ』に出演したことは、彼女が新時代の映画界のミューズであることを決定づけたように思える。
最後に、『中学聖日記』(2018・TBS系)に生徒役で出演し、主演であり「フラーム」の先輩でもある有村と堂々と渡り合った小野莉奈も要注目だ。今年は舞台作品への参加も決まっており、技を磨く大きな転機となりそうである。
次々と新たな時代のヒロイン像、ひいては女性像を打ち立てている「フラーム」の女優たち。一般的に固定化された、“女優さん”というイメージに収まらない存在ばかりだ。時代を席巻する彼女たちの姿に、ときに翻弄され、ときに背を押されながら、この精鋭部隊全体の動向を追っていきたいものである。
■折田侑駿
映画ライター。1990年生まれ。オムニバス長編映画『スクラップスクラッパー』などに役者として出演。最も好きな監督は、増村保造。Twitter
■公開情報
『あの日のオルガン』
全国公開中
出演:戸田恵梨香、大原櫻子、佐久間由衣、三浦透子、堀田真由、福地桃子、白石糸、奥村佳恵、林家正蔵、夏川結衣、田中直樹、橋爪功
監督・脚本:平松恵美子
原作:久保つぎこ『あの日のオルガン 疎開保育園物語』(朝日新聞出版)
音楽:村松崇継
主題歌:アン・サリー「満月の夕(2018ver.)」(ソングエクス・ジャズ)
配給:マンシーズエンターテインメント
(c)2018「あの日のオルガン」製作委員会
公式サイト:https://www.anohi-organ.com/