『ファンタビ』やMCUからあのキャラもランクイン 2018年、“最悪に最高だった”ヴィランTOP5

2018年最高のヴィランランキング

2位:キルモンガー(『ブラックパンサー』)

『ブラックパンサー』(c)Marvel Studios 2018

 キルモンガーは、2018年に登場したヴィランの中で一番ストーリーが深くて泣ける。彼は作品全体を通して、アメリカ系アフリカ人(ハーフ)である自分の真のルーツに手を伸ばし、アイデンティティを確かめようとする。そして、父親の無念を晴らそうとするのだ。ワカンダ人として。

 まず、彼の登場シーンが非常に印象的だった。彼はロンドンの大英美術館の南アフリカコーナーを訪れ、キュレーターに工芸品について質問をする。19世紀のガーナのもの、ベニン王国のものと答える彼女に対して、キルモンガーはワカンダのものだと指摘する。

 自分のもう一つの故郷、ワカンダはアフリカの架空国家だ。現実の史実でイギリスがアフリカを領土にしたという関係性がある中、彼はそれらが“盗品”だとハッキリ言う。この時点で、彼がワカンダに対して強い思いを抱いていることが伺える。

 私はハーフなので、このキルモンガーの気持ちが痛いほどわかった。2つのルーツをもつ人間は、時にどちらにも所属しきれない。しかし、祖国に国民として認められたい。

 そして、彼はワカンダ王国の国王の座を奪おうとするが、これは当時国王であった兄に殺された父の無念を晴らし、世界中にいる黒人たちにこの技術(武器)を共有したいという動機があった。そして、美しい母国の夕日を拝みたい、という気持ちも。

 アメリカの情勢を描いたとも言える本作で、キルモンガーというキャラクターは今最も我々が必要としていたヴィランだったといっても過言ではないほど、その存在そのものが意味深いのだ。

1位:サノス(『アベンジャーズ:インフィニティ・ウォー』)

『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(c)2018MARVEL

 圧倒的な破壊力があるのに実は非常にエモい。そして映画の爆発的ヒットという背景を踏まえ、堂々の1位を獲得したのはサノスだ。彼は単なる紫色のスペース・ゴリラではない。映画では描かれなかったが、サノスの父と母はエターナルズという種族で、彼らはもともと美しい姿をしているのに対し、サノスは醜くく生まれたアヒルの子のような存在だった。

 そのため生みの母親に殺されそうになるなど、とにかく可哀想な幼少期の記憶がある。そんな彼が行き着いた先が虚無主義であり、それが宇宙の生命を半分にする動機に繋がってくる。これが、『インフィニティ・ウォー』では宇宙の均衡を保ちたいという動機に変わっている。

 彼の言い分はこうだ。

「小さな犠牲で大勢を救う。簡単な計算だ。宇宙も資源も限りがある。命に歯止めをかけなければいずれ滅びる。修正が必要だ」。

 このサノス政策は、実はかなり理にかなっている。命を半分にせずとも、資源を確保する方法はあるかもしれない。しかし、彼は何事もバランスが重要であり、それを保つことが宇宙平和に繋がると示唆しているのだ。まさに究極の世直しマンと捉えることができる。

 それに、何よりサノスにも失い難い愛する者(ガモーラ)がいるという事実が、より彼の人間味を引き立てる(人間……ではないけれど)。

 2018年登場ヴィランの中で、彼以上に悪の動機を理解するだけでなく、どこかで「正しさ」を感じてしまうキャラクターはいないだろう。

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