脚本家・演出家/登米裕一の日常的演技論
広瀬すず、『ちはやふる』における“アクション”の説得力ーー原作の魅力をいかに拡大したか
映画『ちはやふる』遅ればせながら「上の句」を見て来ました。いやー、良かったんですよねー。ドキドキしましたもん。何だか勢いだけの感想になっていますが、素直に面白かったのです。原作のファンと言う方も多いでしょうし、期待も注目度も高い中、とても素敵な作品に仕上がっておりました。
原作がある映画には成功するものあれば失敗するものもあります。何が違うんですかね。大掛かりなセットを作ったり、戦争したり、CGを駆使して未知の敵と戦ったりするような予算の差が歴然と出てしまう映画は、やはりお金のある海外映画の方が強いですよね。1分のアクションシーンに何億と使っている映画もありますが、同じ金額で日本では2時間のアクション映画が作られる訳です。
加えて上手く行っていないアクション映画はアクションを撮ることが目的となり過ぎていて、人間を描くことが疎かになっています。登場人物の感情や葛藤が、見ていて信じられるものであるかどうかが大切なのです。そうでなければアクションシーンの説得力も薄れてしまいます。
敢えて曲解しますが、戦争するにしろ、地球外生命体と戦うにしろ、カルタをとるにしろ、好きな人に告白するにしろ、それらすべてはアクションシーンだと思うんです。人が何か行動を起こすのだからアクションです。そのアクションを行う人をそもそも信じられるかどうかで、アクションシーン自体を魅力的に感じられるかどうかも変わってきます。
漫画原作で成功したと言われている作品に多いのは、アクションではなくやはり人物を撮る事を目的にしている作品だと思うのです。
『ちはやふる』は人物を丁寧に描いていた事に加えて、やはりカルタをとるシーンが美しかったです。原作にはないシーンですが、ちはやが髪をかき上げ耳を出す癖も、それにより会場から音が消え静寂が訪れるところも、音と光に対しての美意識が高い映画だなーと思いながら見ていました。だからこそ、Perfumeの主題歌とも親和性が高かったのだと思いました。