ラミ・マレックが怪演! 『アマチュア』“素人”の強みと狂気を活かした必見の復讐劇

ある日、最愛の存在が殺されて始まる復讐劇ーー、アクション映画においてはお決まりの設定だ。妻を失った夫の悲しみを描く作品も、この世には数多く存在する。4月11日公開の映画『アマチュア』は、そんな典型の中でも一味違う。独自の魅力と俳優の怪演ぶりに没頭してしまうスパイアクション映画だ。
地味なCIA分析官が暗殺のプロに覚醒
本作の主人公チャーリー(ラミ・マレック)は、CIAだ。しかし、現場に赴く凄腕のスパイエージェントとは違う。暗号の解読や記録映像・音声、サーバーのログを繋ぎ合わせて事件や真相への手がかりを見つけるプロ、分析官である。どちらかと言えば、いわゆる“椅子の男”なのだ。趣味は部品の解体や組み立て。彼自身、派手な性格でもなくむしろ物静かで、淡々と日々をこなしている。しかし、妻のサラ(レイチェル・ブロズナハン)がロンドン出張中にホテルで起きたテロ事件に巻き込まれ、犯人に射殺されてしまったことを機に、男は“復讐者”となる。
本作の旨みは、この“分析官”が、テロを起こすような犯罪者集団をどのように倒していくのかという設定だ。しかも、銃も扱えない素人が犯人を捕まえるのではなく、その手で殺すことを望んでいるのだから、ミッションの難易度はマックス。しかし、それを凌駕するほどの主人公の豪胆さ、その“狂気”を体現するラミ・マレックの演技が本作の最大の見どころである。
アマチュアだからこその“最強感”
先述の通り、チャーリーは銃もまともに撃てなければ、もちろん人を殺したこともない。それなのに、最初から妻を殺した相手を自分の手で始末しようとする強気さ、そしてそのためには手段を厭わない姿勢がもう素人(アマチュア)じゃないのだ。なにせ“CIA最高のIQ”の持ち主だから、只者ではない。事件を知った直後から4名の犯人を特定し、上司に直接資料を提出する仕事の早さ。しかし、上司が取り合ってくれないので、彼がCIA長官に報告せず秘密裏に行った任務の改ざんをメディアに暴露すると脅しにかかる。しまいには、上司に犯人を捕まえろと取り合うのではなく、あくまで自分が復讐するために「訓練プログラムを受けさせろ」と直談判するのが本当にすごい。
上司を脅し、ちゃんと教育を受けようとする心臓の毛ふさふさのチャーリー。そんな彼の教官ヘンダーソンを演じるのは、名優ローレンス・フィッシュバーンだ。アクション映画のメンター役には欠かせない存在である。厳しく、時には優しくチャーリーを導いていくのかと思いきや、彼から脅されたCIAの上司からチャーリーを“消す”命令を受け、なんとヘンダーソンは敵となってしまう。ただでさえ素人ゆえに危うい行動をとるシーンにハラハラするのに、テロ集団とCIA、どちらも敵に回して世界中を駆け回ることになってしまったチャーリー。「ヤバいじゃん!」と観客目線ではスリル満点なのだが、当の本人であるチャーリーが案外何事も冷静に対処するので頼もしい。もちろん序盤は焦るシーンも多いが、だんだん慣れてきたのか、犯人を目の前にしても緊張しなくなる彼の成長ぶりも作品の魅力の一つだ。
何より、頭脳明晰であらゆる情報を武器に変えてしまう彼だからこその暗殺計画は、観ていて面白い。人に銃を向けると震えが止まらないほど、命を奪うことに慣れていないチャーリー。その純粋さを持ち合わせながらも、予告編にあるように「犯人が泳いでいる空中プールを粉々に割る」など、独創的かつ残酷なやり方も躊躇なくできるのだ。その時折垣間見せる狂気は、マレックだからこそ表現できたものだろう。























