『ヒプステシネマ』Cinema Edit版は初心者にもオススメ 細部に息づくキャラらしさを堪能

初心者も楽しめる『ヒプステ』Cinema Edit版

 『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-』Rule the Stage -Grateful Cypher-【Cinema Edit】(以下、『ヒプステシネマ』)が、3月21日より劇場公開中だ。本作は、音楽原作キャラクターラッププロジェクト『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-』(通称ヒプマイ)の2.5次元舞台化作品(通称ヒプステ)を映像収録し、映画館限定の編集を施して上映する「-Cinema Edit-」シリーズの第6弾となる。現在上映されているのは、2024年10月4日から14日まで東京で上演された「『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-』Rule the Stage -Grateful Cypher-」のステージ。映像作品としての完成度も高く、臨場感のある劇場空間でその魅力を存分に味わうことができる。

【ヒプステ】-Grateful Cypher-【Cinema Edit】30秒予告映像/『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-』Rule the Stage

 実際に鑑賞してみて強く感じたのは、「本作はまさに“ヒプステ初心者”こそ観るべき作品なのではないか」ということだ。2.5次元舞台の観劇経験がなく、ヒプステについての知識を持たない筆者が、ライト層ならではの視点からその魅力を綴ってみたい。

 『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-』といえば、キングレコード EVIL LINE RECORDSが手掛ける音楽原作キャラクターラッププロジェクトだ。イケブクロ・ディビジョン“Buster Bros!!!”、ヨコハマ・ディビジョン“MAD TRIGGER CREW”、シブヤ・ディビジョン“Fling Posse”、シンジュク・ディビジョン“麻天狼”、オオサカ・ディビジョン“どついたれ本舗”、ナゴヤ・ディビジョン“Bad Ass Temple”の6つのディビジョンと、中王区“言の葉党”が登場し、熱いラップバトルを繰り広げるという他に類を見ないユニークなコンセプトで話題を呼んできた。

 その2.5次元舞台化作品であるヒプステは、2019年に「『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』Rule the Stage -track.1-」が上演され、ディビジョン単独ライブや全ディビジョン出演のライブも開催しながら、2024年上演の「-Grateful Cypher-」で22作目を迎えた人気舞台だ。

 しかし、そのスケールの大きさゆえに、「どこから手をつければいいのかわからない」と感じる初心者も少なくないだろう。そんな折に出会ったのが、今回の『ヒプステシネマ』だった。

 まず、『ヒプステシネマ』がヒプステ初心者にとって絶好の“入り口”だと感じた理由の一つは、その鑑賞環境の完成度にある。ラップバトルが物語の核をなす本作において、広いスクリーンと良質な音響で楽しむことは何よりも重要だ。筆者は丸の内ピカデリーで本作を鑑賞したが、同劇場では「丸の内と熊本では、シネマスピーカーとは違った重低音や高音域の再現に優れたスピーカーを採用」とアナウンスがされており(※)、実際に音楽の中低音までしっかりと体に響いてくる感覚があった。ラップのビートや声の輪郭がくっきりと感じられ、言葉が音として届く力を改めて実感できたのは、こうした環境によるところも大きい。

 さらに圧巻だったのが、約300インチ強の巨大スクリーンを3面にわたって展開する「3面ライブスクリーン」だ。舞台全体を包み込むような視覚体験を生み出しつつ、三面の映像を巧みに使い分ける演出が非常に印象的だった。ワンシーンの中で中央に引きの画を映し、左右には登場人物のアップを配置するなど、視点の切り替えが自然でわかりやすい。例えば序盤で各ディビジョンのリーダー、「イケブクロ・ディビジョン」の山田一郎と「ナゴヤ・ディビジョン」の波羅夷空却、「ヨコハマ・ディビジョン」の碧棺左馬刻と「オオサカ・ディビジョン」の白膠木簓、「シブヤ・ディビジョン」の飴村乱数と「シンジュク・ディビジョン」の神宮寺寂雷がいがみ合う場面では、中央に全体の構図を保ちながら、左右のスクリーンで対峙するキャラクターの表情をアップで映し、息を呑むような緊張感があった。

 通常、舞台観劇ではオペラグラスを使って俳優の細かな表情を追うことも多いが、この上映ではその必要はまったくない。むしろ映画という形だからこそ、演劇の迫力を保ったまま、表情の機微や目線の揺らぎまでも逃さずに観ることができる。映画でありながら、非常に“演劇的”な体験として完成していたように思う。筆者が足を運んだのは応援上映回で、ペンライトを振る観客の姿もあり、ライブさながらの熱気と一体感を味わえたのも印象深かった。

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