川村元気が語る“トラブル・イズ・マイ・ビジネス”の精神「厄介ごとに右往左往するのが企画の本質」

川村元気『超企画会議』インタビュー

「ひとから勧められて上手くハマるのが、良い仕事なのかもしれない」

ーー川村さんは映画の仕事以外にも、小説を書いたり、対談集を出したりと、多方面で活躍しています。ほかに挑戦したいことは?

川村:自分にとってよくわからないことに、常に挑戦していたいですね。『超企画会議』と同日に、『理系に学ぶ』という養老孟司さん、若田光一さん、佐藤雅彦さんなど理系の方々との対話集も出すのですが、なぜその企画をやろうと思ったかというと、僕自身が文系人間で、数学とか物理ができないタイプだったからです。社会人になって、「これでようやく理系と関わらなくて済む」と考えていたんですけれど、世界に目を向けるとスティーブ・ジョブズやマーク・ザッカーバーグが映画の主役になる時代で。いまはもうアーティストではなく、理系の人々が世界の主役なんだと考えて、一度そこを学び直そうと。

ーーなにか発見はありましたか?

川村:ドワンゴの川上量生さんが、「人間には主体性なんかない」と仰っていたのが印象的でした。サルだろうがゾウだろうが、主体性のある動物なんていないわけだから、人間だけが主体性を持っていると考えるのはおかしいと。もともと人間なんて、自分からはなんにもやりたくない生き物だというんです。すごく腑に落ちるところがあって、僕自身も映画以外の仕事は、編集者から勧められて始めているんです。でも、それは悪いことではなくて、誰かに「あなたはこういうことをやった方が良い」と勧められて、それがうまくハマるのが、実はいちばん良い仕事なのかもしれないと感じています。なぜかというと、僕自身がプロデュースをするとき、同じようなことをしているからです。

ーー人から自分の新しい資質を発見してもらうには、なにが必要でしょうか。

川村:少なくとも、TwitterやFacebookでなにかを発信していても、難しいとは思います。本当に僕に会いたい人なんてごく僅かだと思うけれど、そういう人はSNSではなくて、頑張って電話番号や住所を突き止めて連絡をしてくるか、なんとかして直接会いに来てくれるはずです。ちょっとハードルが高いけれど、本気ならそれぐらいのことはする。そういう人でなければ、一緒に仕事をしても面白いものができるとは思わないんです。僕自身は映画や小説だけでいっぱいいっぱいなので、TwitterやFacebookでなにかを発信したりできないんです。でも、ちゃんと真面目に自分の仕事と向き合っているうちに、誰かが見つけてくれて、「川村にこういうことをさせたら面白そうだ」って思ってくれたら良いなと思って、映画を作り、小説を書いています。

■川村元気
1979年横浜生まれ。『電車男』『告白』『悪人』『モテキ』『おおかみこどもの雨と雪』『寄生獣』『バケモノの子』『バクマン。』などの映画を製作。2010年、米The Hollywood Reporter誌の「Next Generation Asia」に選出され、翌11年には優れた映画製作者に贈られる「藤本賞」を史上最年少で受賞。12年に初小説『世界から猫が消えたなら』を発表。同書は本屋大賞へのノミネートを受け、120万部突破の大ベストセラーとなり、佐藤健、宮崎あおい出演で映画化。13年には絵本『ティニー ふうせんいぬのものがたり』を発表し、同作はNHKでアニメ化され現在放送中。14年には、絵本『ムーム』を発表。同作は『The Dam Keeper』にて米アカデミー賞にノミネートされた、Robert Kondo&Dice Tsutsumi監督によるアニメ映画化が決定した。その他、著書に小説第2作『億男』、巨匠たちとの対話集『仕事。』。近著に養老孟司、若田光一、川上量生、佐藤雅彦ら理系人との対話集『理系に学ぶ。』がある。

■高根順次
スペースシャワーTV所属の映画プロデューサー。『フラッシュバックメモリーズ3D』、『劇場版BiSキャノンボール』、『私たちのハァハァ』を手掛ける。

■書籍情報
『超企画会議』
川村元気
本体1300円+税
発行:エイガウォーカー
発売:KADOKAWA

「超企画会議」を書店もしくはBOOK☆WALKERで買うと、未収録の“空想会議”が読める(2016年4月21日~10月31日)。
詳しくは、https://bkwk.jp/gnkにアクセス。

《同日発売!》
『理系に学ぶ。』
川村元気
本体1500 円+税
発売:株式会社ダイヤモンド社

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