アカデミー賞とラジー賞、それぞれの意義とは? 映画業界における役割を解説

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『アカデミー賞』公式サイト

 毎年、年明けの映画業界をにぎわせるのが、ハリウッドの映画業界の頂点を決めるアカデミー賞授賞式。前年にロサンゼルス地区で一週間以上映画館で上映された作品の中からノミネート作品が選考され、各部門の最優秀賞が決まる。受賞結果が国内外のその後のマーケティングに多大な影響を与えるため、各映画会社は一大キャンペーンを展開し、投票権を持つアカデミー会員に対して必死にアピールする。過去には『アラモ』(60)のジョン・ウェインのように過剰にアピールしすぎて、受賞を逃した名優もいるが(後に『勇気ある追跡』(69)で受賞)、近年はそこまで露骨にアピールする俳優はいない。またオスカー・ノミネーションを受ける為だけに、候補作を12月末に主要都市で限定公開して、年が明けてから拡大公開するというのも常套手段だ。

 そんなアカデミー賞の今年の注目作は、レオナルド・ディカプリオが悲願のオスカー獲得なるかというアレハンドロ・G・イニャリトゥ監督の『レヴェナント:蘇えりし者』、そしてアンサンブル演技が絶賛され、前哨戦といわれる全米俳優組合(SAG)賞で作品賞を獲得したトム・マッカーシー監督の『スポットライト 世紀のスクープ』の2本。ダークホースとして、ゴールデングローブ賞のコメディ/ミュージカル部門の作品賞、主演男優賞を制覇したリドリー・スコット監督(なぜか監督賞候補から外されているが)の『オデッセイ』、そして、アクション映画として初の最優秀作品賞獲得となるかが注目されているジョージ・ミラー監督の『マッドマックス 怒りのデス・ロード』が控えている。

 また主演女優賞の最有力候補となっているオスカー常連女優の一人ケイト・ブランシェットがノミネートされているトッド・ヘインズ監督の『キャロル』の動向が気になるところだが、かつて作品賞の最有力候補と謳われながらも、『ブロークバック・マウンテン』(05)に賞を与えなかったほど保守的なアカデミー会員の傾向として、同性愛を扱った作品が受賞する可能性は若干低めではある。また過去2年に渡り主要俳優部門に20人全て白人がノミネートされているという問題で、人種差別問題が起きスパイク・リーやウィル・スミス夫妻等が授賞式のボイコットを呼び掛けた事もニュースになってしまった。

 そもそも投票権を持つ映画芸術協会アカデミー会員とはどんなメンバーなのか? というのが、日本人にとって謎である。協会ははっきりと会員メンバーの実態を公表していないが、ハリウッド外国人映画記者協会による選出のゴールデングローブ賞や、全米映画俳優組合主催のSAGとは違い、批評家やジャーナリストよりもハリウッドの映画業界で働く俳優、スタッフ、関係者がその大半を占めているため、公平性に欠けるという指摘もある。またメンバーの平均年齢は65才以上の白人男性で構成されていると言われ、差別問題が大きく報道されてしまったことを真摯に受けた協会は、来年度以降は会員規約を変更し、また新たに会員を増やすことを発表。これにより来年度以降は偏りのない選出が期待されるが、こればかりは予想もできない。

 一方、毎年アカデミー賞の前日に発表されるゴールデン・ラズベリー賞、通称ラジー賞も映画ファンにとっては本家アカデミー賞と並ぶお楽しみの一つになっている。こちらは年会費さえ支払えば、一般人でも投票権を得ることができるオープンな賞だ(少々オープンすぎるが)。その年の最低映画に送られる不名誉な賞として知られているが、これを一流のジョークとし受け流す広い心をもったスタッフ、キャストの存在が鍵である。

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