『X-ミッション』はただのリメイクではない 命懸けで実行したリアルアクションの衝撃
謎の連続強盗団に潜入捜査した若きFBI捜査官と、犯人との間に生まれた奇妙な友情を描いた91年の名作『ハートブルー』がバージョンアップされて蘇った。監督はこれまで『ワイルド・スピード』(01)等の撮影監督を務めてきたエリクソン・コア。これまでカーアクションや激しいアクション・スタント中心の作品に携わってきた人物が、ありきたりのドラマを演出する筈が無く、本作では自身が撮影監督も兼ねた事で予想をはるかに超えた生のアクションが満載の作品に仕上がった。
モトクロスバイクのトップ・アスリートだったジョニー・ユタ(ルーク・ブレイシー)は、自分の無茶なスタントが引き起こした友人の死をきっかけにFBI捜査官への転身を計る。そんなジョニーの前に現れたのが、世界各地の米国企業ばかりを襲い荒唐無稽な方法で現金を強奪し、貧民地区に現金をばらまく謎のアスリート集団。彼らの犯行パターンから、エクストリーム・スポーツ・チームのカリスマ、ボーディ(エドガー・ラミレス)のチームに覆面捜査官として潜入し、彼らの犯罪を暴くというミッションに志願する……。
オリジナル版の『ハートブルー』はまだ初々しいキアヌ・リーヴス演じるFBI捜査官ジョニー・ユタと、今は亡きパトリック・スウェイジ扮する天才サーファーにして強盗団のリーダー、ボーディとの友情、人間としての成長、そして裏切りを見事に描いた作品だった。監督はのちに『ハート・ロッカー』(08)で史上初の女性監督によるアカデミー監督賞を獲得することになるキャスリン・ビグロー。製作当時はジェームズ・キャメロン夫人でもあった事でも知られている。人物の描き方には女流監督らしい繊細さを感じさせる一方、荒々しく激しいアクションが共存するという絶妙なバランス感覚の持ち主で、『ハートブルー』は今もカルト的な人気を博している。
そんな『ハートブルー』を、ガンカタ・アクションで知られる『リベリオン』(02)の監督・脚本や『ソルト』(10)の脚本を手掛けたカート・ウィマーが新たな要素を加えて脚本を練り上げた。オリジナルで登場したのはサーフィンだけであったが、本作ではサーフィンだけに留まらず、エクストリーム・スポーツのエキスパート集団という設定を加えて、モトクロスやスノーボード、そしてロッククライミング、そしてウイングスーツ・フライングといったその道のプロフェッショナルにしか再現出来ない要素を加え、単なるリメイクとは一線を画した作品にブラッシュアップした。そして彼らの犯行パターンの鍵となる“オザキ8(エイト)”と呼ばれる一流アスリートが求める“大義の達成”がストーリーの軸になっているのが特徴だ(ちなみにこの“オザキ8”はあくまでも本作のために作られた架空の大義だ)。