『X-ミッション』はただのリメイクではない 命懸けで実行したリアルアクションの衝撃

『X−ミッション』リアルアクションの衝撃

 “オザキ8”をフィルムに収めるため、本作では実際に活躍しているプロのアスリートたちに全面協力を仰ぎ、既存のスタントマン以上のリアルなアクションをカメラに収めるという大胆な手法をとっている。これが本作の魅力であり、最大の見せ場にもなっている。グリーン・スクリーンで俳優だけ撮影して、あとから背景を合成したり、俳優そのものを全てCGで処理する事が当たり前になり、ロケーションで本物の映像を撮影するという単純な事が特別な事になってしまったハリウッドには憤りを感じる。本作でアスリートたちがカメラマンと共に挑んでいく数々のスタントから伝わってくる本物の迫力には到底敵うはずがない。一歩間違えば死に繋がりそうな危険極まりないアクションを、その道のエキスパートたちが“演じる”事によって、観客にもエクストリーム・スポーツの数々を追体験させようという製作者の意図は十分すぎるほどで、それらはロバート・ゼメキス監督が『ザ・ウォーク』(15)で3Dを使ってワールド・トレード・センターの綱渡りを観客に疑似体験させた以上の効果を産み出すことに成功している。

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(c)2015 Warner Bros. Ent. (c)Alcon Entertainment, LLC. All Rights Reserved.

 犯罪映画でありながら、サーフィンに命をかけた若者たちの青春映画としての側面を持っていたオリジナル版『ハートブルー』。オリジナル版のファンからしてみれば“何かが違う”という疑念を抱くのはどんなリメイク作品にも課せられた業のようなものなのだが、本作に関してはひとまずその疑念を取り払い、違った角度で観ることをお勧めする。本格的に3Dを駆使したカメラワークと、オリジナル版以上にハードで衝撃的な展開も後半には待ち構えている。パトリック・スウェイジやキアヌ・リーヴスに比べれば、エドガー・ラミレスとルーク・ブレイシーという日本ではほぼ無名に近いキャスト陣が不利であることは否めないが、そこを逆手にとって本物のアスリート達によるアクションやストーリーを追うことに集中するのも一考だろう。

■鶴巻忠弘
映画ライター 1969年生まれ。ノストラダムスの大予言を信じて1999年からフリーのライターとして活動開始。予言が外れた今も活動中。『2001年宇宙の旅』をテアトル東京のシネラマで観た事と、『ワイルドバンチ』70mm版をLAのシネラマドームで観た事を心の糧にしている残念な中年(苦笑)。
 
■公開情報
『X-ミッション』
2月20日(土) 新宿ピカデリー、丸の内ピカデリーほか全国ロードショー
監督・撮影:エリクソン・コア
脚本:カート・ウィマー
原案:POINT BREAK
出演:エドガー・ラミレス、ルーク・ブレイシー、テリーサ・パーマー、デルロイ・リンドー、レイ・ウィンストン
配給:ワーナー・ブラザース映画
原題:POINT BREAK/全米公開:2015年12月25日/114分/PG-12
(c)2015 Warner Bros. Ent. (c)Alcon Entertainment, LLC. All Rights Reserved.
公式サイト:www.xmission.jp

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