アニメ放送開始『ヘルモード』の出発点 原作者・ハム男が語る制作背景と創作の源「自分で妄想した話で泣いちゃうことがあるんです」

「小説家になろう」で2019年に連載が始まり2020年にアース・スター ノベルから書籍化されたハム男原作・藻イラストの小説『ヘルモード 〜やり込み好きのゲーマーは廃設定の異世界で無双する〜』が、テレビアニメとなって1月9日深夜からTOKYO MXやMBS、BS日テレなどで順次放送開始となる。

やり込み好きのゲーマーが謎のゲームでなかなか成長しない「ヘルモード」を選ぶと、そのまま異世界に転生してしまうというストーリー。転生者はアレンという名で「召喚士」の才能を少しずつ鍛えながらだんだんと強くなって世界を脅かす敵と戦う冒険に出る。鉄田猿児さんのコミカライズも好調な『ヘルモード』が書かれた背景と、面白さの秘密を作者のハム男先生に聞いた。
アニメ化は確信していた?
――待望のTVアニメが1月9日から始まりました。アニメ化についてどのような感想をお持ちですか?
ハム男:2021年くらいでしたか、結構早い時期にアニメ化の話はうかがっていたんです。もうアニメ化するんだという印象でした。そこからアレン役の田村睦心さんに始まりキャストの方々や監督さん、脚本家さんがどんどんと決まっていく中で、だんだんと期待が高まってきました。
実は私の中ではこの作品はアニメ化すると確信していたところがありました。「小説家になろう」で結構ランキングが高くて、同じような位置にある作品がほとんどアニメ化されていたので、私の作品も必ずと信じていました。あとは良く作ってほしいなという思いだけでした。
――実際に完成してきたアニメを見てどのような印象を抱かれましたか?
ハム男:絵コンテから始まって修正をかけながら絵がどんどんと綺麗に整えられていくところを見て、アレンたちの可愛らしい動きが表現されていて良いなと思いました。アレンによる心の声が映像や音声によって見たり聞いたりできて、その表情が実に豊かで私もこういった文章を書きたかったなと思いました。今はもう、書いたり読んだりする時もアレンの声は田村さんの声になっています。
――最初に小説が刊行された際に作られたオーディオドラマの時から、田村さんはアレン役を演じられてきました。ご本人も改めてテレビアニメでアレンを演じられて嬉しいと話してました。ハム男先生がそう感じているならきっと嬉しがっていると思います。
ハム男:アニメの中でキャラクターを演じ分けているのがすごいなと思いました。三歳児と四歳児で声質を分けていたりするんです。収録には2回くらいしか立ち会えてはいないんですが、しっかりと丁寧に演じられていました。監督の指示など結構滅茶振りもしているなあと思いながら見ていました。
――放送が進むに連れて声優の方々の活躍ぶりが分かって来て、いっそう面白みが増すと思います。そんな『ヘルモード』ですが、ハム男先生はどのようにして執筆されたのでしょう。作家になろうと思われたきかっけのようなものがあったのでしょうか。
ハム男:『ヘルモード』は2019年の11月から連載を始めました。それまでは1作しか小説というものを書いたことがありませんでしたが、「小説家になろう」自体は投稿を始める2年くらい前からずっと読んでいたんです。好きだったのは異世界転生ものですね。男の人が主人公で、30歳くらいで転生するといった話が感情移入しやすかったので、選んで読んでいました。それこそ600作品くらい読んだでしょうか。平日でも5時間とか多いと10時間くらい読んでいました。
――とてつもない読書量ですね。
ハム男:それ以前は、異世界転移・転生ものの漫画を読んでいました。電子書籍のサイトで毎月何十冊、何百冊と読み漁っていました。月に数万円使ってましたね。その中に1,000円を超える本があって、漫画なのに高いなと思ったら小説だったんです。可愛いドラゴンのイラストが表紙絵に描かれていた作品、猫子先生の『転生したらドラゴンの卵だった ~最強以外目指さねぇ~』ですね。
――書籍化されたのが『ヘルモード』と同じアース・スター エンターテイメントからも刊行されており、同じ1月からテレビアニメ化されますね。なかなかのご縁ですね。
ハム男:それで、1巻2巻3巻と読んでいったんですが、続きを読もうとしたらまだ出ていなかったんです。それで調べたら続きが書かれている「小説家になろう」に行き着きました。そこで当時の最新話まで読み終わってしまって、別の作品も次々と読んでいった感じです。それで読むものがなくなってしまって、じゃあ自分で書こうかなといった流れです。
ハム男の想像力の源は
――『ヘルモード』のようなライトノベルは読んで来られたのですか?
ハム男:中高生の頃に読んでいましたね。秋田禎信先生の『魔術士オーフェン』や賀東招二先生の『フルメタル・パニック!』などです。あとは『テイルズ オブ ファンタジア』のノベライズを好きで読んでいました。ただ、そうやって読んでいても、自分で小説を書くということはなかったです。書くというよりも自分の頭の中で物語を妄想するのが好きだったんです。何百回も同じ話の続きを考えていくみたいな、そんな学生でした。実はそうやって自分で妄想した話で泣いちゃうことがあるんです。道ばたとかカフェで号泣したりしていました。
――感動できる物語を創造できることの表れだと思います。『ヘルモード』についても書き始める前にいろいろと想像していたことがあったのですか。
ハム男:設定については、あるMMORPGがあって、それがとてもレベルが上がりにくいゲームで私の場合は98から99に上げるのに2年くらいかかったんです。1回死ぬと4ヶ月分の経験値が消えてしまうとか、そんな感じでやり込んでいった記憶があったので、同じようにやり込むタイプの作品を書いてみようと思いました。その設定なら自分を表現できると思ったところもあります。
――ゲームはいろいろと遊んでこられたのですか。やはり選択するのはヘルモードだったのでしょうか。
ハム男:「ドラゴンクエスト」とか「テイルズ オブ」とか「ファイナルファンタジー」シリーズとかですね。あとは「ポケットモンスター」。何度クリアしても楽しいものをやっていた記憶があります。昔のゲームは結構一度クリアしてからナイトメアモードみたいな感じで難しいモードに行ったりするんです。今のゲームは最初からハードモードも選べるようになっていますが、ハードモードを選択するとクリアできなかったりするので、なかなか選択が難しいですね。
召喚士の「やり込み」は剣の道や魔術の道を極めるのとは違う楽しさがある
――「小説家になろう」での連載で、ストーリーや設定はどのように考えていったのでしょうか。書きながら読者の反応を見て変えていくようなことはあったのでしょうか。
ハム男:ある程度のところまで考えて書き始めましたね。ただ、普通は2週間ぐらい経てば結構読まれたりするのが、『ヘルモード』は1ヶ月半くらい無風だったんです。それで、更新頻度を上げたんですけどあまり反応があまりなくて、このまま終わっちゃうのかと思いながら書いていました。それが、途中で小さめのオチが付いたところで皆さんの反応がグッと良くなって、それから読んでもらえるようになりました。やっぱり伏線を回収しなければいけないんだって思いました。
――伏線を回収とは?
ハム男:第1章で言うと、どうして領主様は農奴たちに対してあれほどボア狩りを押しつけてくるんだろうというところです。どんどんと要求が激しくなってきて、狩るボアの数が増えていくんですが、そこできっと何かあるんだろうとアレンが考察するところを書いていきました。そもそもアレンが暮らしている村ができた理由やアレンたちが置かれている環境に背景があって、それがはっきりしてくるという流れです。領主のグランヴェル男爵も結構貧しい暮らしをしているということをしっかり書いて、アレンの疑問に対する答えがちゃんと描かれたのが良かったのではないでしょうか。ちゃんと答えを出してくれたと読者の方が納得してくれた感じです。
――アレンはわざわざヘルモードを選んで最弱のところから始めて、レベル上げにも苦労するというなかなかシビアな設定のキャラになっています。やり込み方のゲームの設定を取り入れたからですが、他の理由もあったのでしょうか。
ハム男:そういった作品の方が読んでて楽しかったことがありますね。前世の記憶と転生先の状況とのギャップの中で試行錯誤していく過程、異世界を理解してそこでの生活に飛び込んでいく過程がきっと楽しいのではと思って書いていました。読者の方々からの反応も、自分ではなかなか出来ないことが書かれていて、試行錯誤していく姿を見るのが楽しいというものが多かったですね。
――アレンの才能を「召喚士」にしたことにも理由があるのでしょうか。クレナの剣聖はもちろん剣豪や魔導師といったファンタジーでお馴染みのカッコいい職業とは違っています。
ハム男:やり込みを表現したかったところがありますね。剣の道を極めるのも魔術の道を極めるのもやり込みだとは思いますが、それよりも、いろいろな設定の上で試行錯誤することで選択肢が増えていく召喚士の方が楽しいかなって思って選びました。剣豪も魔術師も日々鍛えて強くなっていくという道筋が見えますが、だったら召喚士は? というところに挑戦して、しっかり表現できたと思っています。
――召喚する召喚獣が多彩で驚きます。怖いものから可愛らしいものまでいろいろ。これらはどのように考えて作っていったのですか。
ハム男:ストーリー上のその状況で活躍できるものを作っていく感じです。普段は役に立たないけれど、その時には抜群の効果があるような感じ。もう少しランクが高かったら便利だったのにと歯がゆい気持ちが最初のころはあると思います。それがだんだんと期待を持てるようになっていくのを見る楽しさがあります。種類や形態については、もともと動物が好きで家に図鑑があるような人間だったので、そういった経験を元にして考えています。召喚「獣」なのにカエルが出てきたり、そもそもリンゴは獣ではなかったりすることもありますが、そこは気にしていません。カエルは昔は虫扱いされていたといったことも調べ系統も考えて作っています。
――どこまでも無限に生み出せそうです。
ハム男:『ヘルモード』については一応、ストーリーを最後まで一応考えてあるので無限ということはないですが、これからもいろいろと考えて書いていくつもりです。
表の主人公・アレンと裏の主人公・ドゴラ
――アレンですが、農奴から領主様の従僕になって、領主様の娘のセシルの世話をしながら人々を守る大活躍をして学園都市に通うようになってと、だんだんと自分が生きている世界を広げていきます。こうした成長の物語も最初から構想にあったのでしょうか。
ハム男:主人公の目線で世界がだんだんと広がっていったらいいだろうと思って書いています。村から町へ、町から都市へ、都市から他の国・大陸へといった感じです。ヘルモードなので成長速度が遅すぎてすぐに強くなりませんから、最終的な目標にむかっていろいろなことをしていきます。アレンたちが行く国については、エルフの国やドワーフの国、獣人の国といろいろな国があった方が楽しいので書きました。そうした国々をまたいで行く中でいろいろな問題が出て来ます。それに主人公のアレンがどのように接していくのかを描けたらと思っています。
――アレンたちが行く国々は、現実の社会を反映しているようなところはありますか。
ハム男:いろんなものを見て経験してきたこと、種族の話とかもそうですし物語もそうで、そういったものを含めて自分の中で落とし込んで描いています。世界観から作らなくてはいけなくて、国をひとつ作るという作業をするので筆が進みません。時代背景も種族も民族も違う国々がどうして世界に存在しているんだろうということを考えなくてはいけませんから。結構私もいろいろな国に行ったんですが、小説の中に作るのは本当に大変です。
――エルフにしてもドワーフにしても獣人にしても、これまでに登場してきたファンタジーの中でイメージが形作られているところがありますが、そうしたテンプレートに載らず自分で考えて作ることで、存在感が生まれて説得力が増すといったところでしょうか。
ハム男:そうかもしれませんね。もう6年も書いている物語なので、後から補強したことも多いですが、説得力があって納得感を得られるような世界、こういう種族ならこういった考え方をするとか、こういった歴史があるからこうなったのだろうといったことを、なるべく分かる形で書いていけたらと思っています。どうしてこのような世界になったのかについては、特異点のような存在によって変わっていったというところまで描きたいです。特異点自体は最初の頃は覆い隠していますが、だんだんと分かってきます。
――アレン以外のキャラクターについて教えて下さい。幼馴染みで剣聖の才能を持ったクレナや、やはり同じ村の出身で斧使いの才能を持ったドゴラなどバリエーションに富んでいて、お互いが協力し成長し合いながら進んでいく感じが楽しいです。
ハム男:アレンがやり込み好きのゲーマーとして自分で何でも出来てしまうところがあって、それ自体は見ている人も面白いとは思いますが、そうではないキャラクターも欲しいと思いました。天真爛漫なクレナとか領主様の娘で貴族として生まれてきたセシルとか。
あと意識して作ったキャラとして、実はこの作品には裏の主人公がいるんです。ドゴラです。アレンだけだと強すぎるので作りました。ジャガイモ顔のドゴラがこの世界の標準という位置付けですね。
――子供の頃はアレン相手にイキっていたところがありましたが、アレンもクレナもどんどんと強くなっていく中で一人だけ置いて行かれていかれます。それでもいつか成長してくれるんだろうと期待を誘ってくれるキャラです。
ハム男:読者の方もそういったキャラがお好きなんでしょうね。もしかしたらアレンよりファンが多いかもしれません。ドゴラをいじりすぎたこともありますが、それでもジャガイモ顔と書いているドゴラが人気というのは不思議です。小説のイラストもコミックもアニメも誰もジャガイモ顔に描いてくれないんですが。
――絵師の皆さんもドゴラが好きなんだと思います。彼にはいつか来てくれると信じて見守っているのが読者の共通した思いです。
ハム男:そこはいろいろと考えています。ただ、報われることだけが答えとは限らないので、最後の最後までドゴラの生きざまが描いていければそれで良いと思っています。
『ヘルモード』完結までの道のりは
――『ヘルモード』でこだわっているところがあるとしたらどこですか?
ハム男:これは読者の方々からの感想でも結構あるんですけど、善悪というか悪が必ず裁かれるというのは、私の中でちょっと否定的なところがあるんです。アレンがボコボコにするとか、悪い奴が出て来るから殺してしまえとか、絶対倒せみたいなのはあまりないのかなと思います。悪い奴は出てきます。のさばっている奴もいます。そういうキャラがいる方が自然だと思って敢えて書いています。全部倒してしまうのは自然じゃないですから。
――鉄田猿児先生によるコミック版も大人気です。今回のアニメ化も喜んでおられましたが、漫画化などで自分の作品の読者が広がっていくことはやはり嬉しいですか?

ハム男:たくさんの方に読んでいただく機会が増えるので嬉しいです。実はSNSでの『ヘルモード』の感想の9割がコミックのことなんですが、それも広がったからでとても良かったと思っています。コミックは設定量の多さに驚きました。小説のイラストでは描ける量に限界があるんですが、コミックはすべての召喚獣の設定画があって村や町の設定もあります。農奴や平民のメンバー全員のデザインもあって、その量に驚きましたし助かりました。
――コミックやアニメに対してハム男先生は監修をしているのでしょうか。
ハム男:ほとんどお任せしています。小説に書いてある内容と違っていたらそれは違いますと話をしますが、基本的に内容の通りでその上に調べていただいているので安心です。コミックスが発売になると「小説家になろう」で『ヘルモード』のアクセスが増えるんですよ。コミックスから小説に来てくれる人がいるということでとても嬉しいです。

――参考までに伺いますが、ハム男先生にとって人生はやはりヘルモードの方が良いですか、それともこちらはイージーモードを願いますか。
ハム男:私は小さなハードルを越えていくのが結構好きなんですね。だから、最初はイージーモードからはじめていって、だんだんと発展していけたらと思っています。サラリーマンをしてたころはなかなか厳しい職場でしたが、今は『ヘルモード』を完結させるために執筆に専念しています。小説を書きやすい環境に住んで部屋の中もそのように変えました。読者の方から完結するまで死ねませんというお声も戴くようになっているので、頑張って書き続けていきます。アニメ化されたのでたぶん書籍も最後まで出して戴けるとは思っていますが、少なくともウェブ版は責任をもって最後まで書きます。
――完結までにどれくらいかかりそうですか?
ハム男:毎日書き続けてもあと3年ぐらいかかるかなと思ってます。
――応援します。他の作品を平行して執筆することは考えていますか?
ハム男:物語自体はどんどん出てくるんですが、ある程度完結のメドがつくまでは『ヘルモード』1本でやっていこうかなと思っています。新しい世界を描くとしたら、まだ何も考えていませんが、おそらくファンタジーものか異世界ものを書くかなと思っています。
――最後に、『ヘルモード』を読んだりアニメで見たりするファンの方々にメッセージをお願いします。
ハム男:主人公のアレンが見ている世界がどんどんと広がっていきます。それをどのようにやり込んで何ができるようになっていくのかを見ていって欲しいと思います。あとは自分にとって親和性のあるキャラを中心に、楽しみながら見ていって欲しいです。
























