アニメ『光が死んだ夏』原作ファンが驚いた要素は? “光が生きていた冬”の衝撃

『このマンガがすごい!2023年』オトコ編1位を獲得するなど、根強い人気を誇る 青春ホラーマンガ『光が死んだ夏』。7月からはTVアニメの放送が始まり、より広い層が盛り上がりを見せている。そこで今回はアニメ版と原作の内容を比較し、どんな違いが存在するのか紹介していきたい。
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同作の舞台は自然豊かな山間の集落。主人公・よしきは、幼い頃からずっと一緒だった幼馴染みの光に異変が起きていることに気づく。半年前に山で行方不明になった際、光は命を落とし、その身体と“ナニカ”が入れ替わっていたのだ。しかしよしきは本人そっくりな別人だとしても光を失うことに耐えられず、これまでと変わらない日常を求めてしまう……。
ストーリーの大筋は原作と変わらないが、アニメ版では物語をより分かりやすくするためにさまざまな構成の変更が行われている。
原作の第1話は、よしきが光に「お前やっぱ光ちゃうやろ」と疑問をぶつけるところから始まるが、アニメでは半年前に山中で起きた出来事をプロローグとして描写。今わの際でよしきのことを考えている光のもとに、ナニカが訪れるという場面を挿入していた。これは原作では第10話で初めて描かれた場面だが、先に“チラ見せ”することによって、むしろ時系列を理解しやすくなっている印象だ。
しかもナニカの禍々しい姿や、瀕死の光が意味深なつぶやきをこぼすところも描写されており、視聴者の前に恐ろしくも魅力的な“謎”が提示されている。
また構成の変更点としては、作中の重要人物たちが序盤から登場していることも重要。たとえば原作では第9話で初登場する田中が、1話目から物語に絡んでいる。ケージに入ったハムスターを持ち運びながらマンションの一室に突入し、怪異に向かってバールを振り下ろす田中の姿はかなりインパクトが強い。
さらにその後のエピソードでも、田中が村のなかで暗躍していることが早々に明かされ、メインストーリーと平行して描かれていく。この情報は原作では後から判明する構成になっていたため、時系列がよりわかりやすくなったと言えるだろう。
そして霊感をもった主婦・暮林理恵も、1話目からわずかに顔見せ。これから動き出す物語のスケールの大きさを予感させ、ワクワクさせてくれる演出だ。
■“音”の演出によって何倍も強くなる恐怖
その一方、アニメならではの表現も多数登場。たとえばよしきが森の中で「く」の化け物を発見する場面では、躍動感のある動きと、背後に顔をカットインさせるアニメオリジナルの演出によって、より不気味さが際立っている。
また、ED映像も大きな反響を呼ぶことに。生きていた頃の光がよしきと電車に乗り、遊びに行く姿を描いているのだが、最後にはまったく同じ構図で“今の2人”の関係が示される……という内容で、残酷かつエモーショナルな映像に仕上がっている。
もう1つ注目したいのは、“音”の演出。たとえば印象的なのは、「シャワシャワシャワシャワ」という蝉の声の使い方だ。いかにもホラー作品らしい真夏の雰囲気を表現するだけにとどまらず、それを物語上の演出に組み込んでいる。
第1話の冒頭では、大音声の蝉の声が響き渡るなか、よしきが光に自分の正体を明かすくだりで突如として静寂が到来。激しいギャップによって、それまでの日常が一気に崩れ去る衝撃が表現されていた。
また劇中では、よしきたちのクラスが合唱の練習を行うシーンが度々登場。クラスメイトたちのやる気がないのか、まだ足並みが揃っていないようで、不協和音めいた歌が奏でられている。学校生活の雰囲気が生々しく感じられるともに、どこか不安感を煽られる部分もあるため、青春ホラーアニメとしてこの上なく秀逸な演出ではないだろうか。
ストーリーを分かりやすく再構成している上、音や映像によって洗練された恐怖を与えてくれるアニメ『光が死んだ夏』。まだまだ放送は続くので、今のうちに最新話まで追いついておくことをオススメしたい。






















