“弱者男性”が魔性の女に翻弄されて……押見修造からの影響も感じる衝撃作『澱の中』が描くグロテスクな欲望

『ヤニねこ』や『ねずみの初恋』、『平成敗残兵☆すみれちゃん』や『パラレルパラダイス』など、数々の衝撃作を連載している『週刊ヤングマガジン』(講談社)。そこで2025年2月から始まった『澱の中』という作品が、新たな波を巻き起こしつつある。
同作の作者・あむは、『私が15歳ではなくなっても。』を手掛けた漫画家。6月6日には単行本の1巻が発売された。
主人公の五味次郎は29歳の素人童貞。公式表記で「弱者男性」とされており、二次元にしか興味をもたず、職場では男たちとオタクトークに花を咲かせる毎日を送っている。そんなある日、職場に夢空黒子という新入社員が入ってきたことから人生が狂いだす……。
夢空は黒髪眼鏡の童顔で、少々天然っぽいところがある女性だ。その容姿は古典的な少女マンガのようなタッチで描かれており、キラキラとした大きな瞳で五味を魅了する。しかし作中では、少女マンガとはほど遠いグロテスクな関係性が描かれていく。
というのも五味は職場で掃除当番になった日、トイレで夢空の使用済み生理用ナプキンを見つけると、出来心から家に持ち帰ってしまう。そして激しい罪悪感にさいなまれるが、二次元を凌駕するリアルな興奮にタガが外れ、その後も同様の行為に及ぶ。しかし夢空は自分の捨てたナプキンを誰かに盗まれていることに気づき、隠しカメラを仕掛けることで五味が犯人だと突き止めるのだった。
普通であればここでバッドエンドになりそうなところだが、まだ本当の物語は始まってすらいない。この先で夢空が“魔性の女”としての本性をむき出しにして、五味を翻弄していくからだ。
とはいえ同作の魅力は、読者の想像を超えてくるストーリーだけではない。むしろ、生々しい心理描写とリアリティに満ちた人間観こそが最大の見どころとなっている。





















