【漫画試し読み】封印されし謎の美女といきなり夫婦関係に? 異彩を放つ和風戦記ファンタジー『石神戦記』がおもしろい

 現在のマンガ業界はいわば空前のファンタジーブームの真っ只中。さまざまな設定の作品が次々と生み出されているが、裏を返せば、オリジナリティを発揮して注目を浴びるのが難しい時代となっている。そんな中で異彩を放っているように見えるのが、古日向いろはによる『石神戦記』だ。

『石神戦記』第1話を読むには画像をクリック

 同作は2023年2月から『webアクション』で連載されている作品で、単行本は今のところ3巻まで刊行済み。“和風戦記ファンタジー”と銘打たれており、古代日本のような世界観と壮大なファンタジー設定、そして魅力的なヒロインとの恋愛要素を兼ね備えた作品となっている。

 物語の舞台となるのは、「日倭津国」という島国。先王の死によって王太子派と王弟派の2つが対立するなか、主人公・宇迦乃イサザが住む瑞穂領で血なまぐさい争いが勃発する。王太子派の勢力によって、王弟派である瑞穂領の領主・宇迦乃サクが襲撃されてしまうのだ。

 このサクの弟であるイサザも、命を奪われる寸前まで追い込まれるものの、そこで隠し部屋に封印されていた「石の民」に語り掛けられる。イサザが自身の身を捧げることで「石の民」と契約を結ぶと、不思議な力をもった全裸の女性・ヤチホが現れ、「今日から私がお前の嫁だ」と宣言するのだった……。

 もしかすると少々複雑な設定だと感じる人もいるかもしれないが、手っ取り早く理解するなら、「国の権力争いに巻き込まれた少年が運命に抗うお話」とでも考えておけば問題ない。一度読み始めれば、圧倒的な画力で描き出される王道の少年マンガのような展開に、のめり込んでいってしまうはずだ。

 大まかな展開としては、イサザが敵勢力に奪われた瑞穂領を取り戻すため、ヤチホと共に冒険を繰り広げていくという流れだが、そこで面白いのは「石の民」の設定。ヤチホは石のように頑丈な肉体と、周囲の石を自由自在に操って戦う力をもつ。

 そしてヤチホ以外にも「石の民」は存在しており、能力バトルのダイナミックな戦闘シーンが描かれることとなる。普通なら1人だけでも珍しい“石使い”の能力者が多数登場するという意味で、かなりユニークな世界観だろう。

 なおヤチホは「石の民」の中でもずば抜けた力の持ち主で、作中ではほとんどチートキャラじみた扱いだ。といっても決して万能ではなく、「イサザから離れられない」という制約が存在する。そしてイサザもただ守られるだけでなく、次第に“戦う力”に目覚めていくため、一種のバディものとして成立しているのが面白いところ。力で劣るイサザが頭脳と勇気によって活路を切り拓く姿には、思わずグッとくるものがある。

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