〈アニメイト〉好調の理由は出店戦略にあり? ヴィレヴァンとの対比から見えてきた「わざわざ感」の重要性

「ACOS」・「アニメイトカフェ」で更なる「わざわざ感」を作り出す

『アニメイト秋葉原』のグランドオープン時には学院型ガールズ・ボーカルユニットである「純情のアフィリア」の小宮山アサミさん・白雪ミハルさんによるチラシの配布が行われた。特別感を演出するのもアニメイトの戦略にも注目である

  ちなみにこの点でいえば、アニメイトが展開する店舗の中でも、コスプレショップ「ACOS」、コラボレーションカフェ「アニメイトカフェ」の出店戦略も、かなり消費者側からのブランドの見え方が考えられている。

  「ACOS」は札幌(北海道)、仙台(東北)、宇都宮(北関東)、池袋(首都圏)、新潟(中部日本海側)、名古屋(中部太平洋側)、大阪日本橋(阪神)、広島(中四国)、福岡天神(九州)と、各エリアの中枢都市に限って立地させている。さらに、「アニメイトカフェ」になると、仙台(東日本)、池袋(首都圏)、天王寺、大阪日本橋(西日本)と相当数、数を絞っている。

  これによって、近所にアニメイトがある場合でも、さらに羽を伸ばせば「ACOS」に行ける、もっと羽を伸ばせば「アニメイトカフェ」に行ける……と、アニメイト内での「わざわざ感」の階層性がかなり意識される。消費者にとっては、近くにアニメイトがあっても、それよりもさらに「わざわざ行かないと行けない・体験できない」ことがあると意識させる。その頂点に君臨するのは「池袋本店」という全国に1店舗しかない場所だろう。その「聖地感」は否応無しに増す。こうした階層性を意識させる出店戦略の妙によって、アニメイト全体のブランディングを消費者に意識させることに成功しているのだ。

アニメや漫画好きの聖地『アニメイト池袋本店』の外観

「カルチャー」と企業はどのように対峙すべきか

  この点でも対照的なのがヴィレッジヴァンガード。先ほど、ヴィレッジヴァンガードが急拡大したことを述べたが、店舗数が増えることは、近所に店舗が生まれることでもある。特に、ヴィレッジヴァンガードではショッピングモールを中心とする店舗が増えた。これによって、身近にカルチャーを楽しめる場所が増えたことは、確かに良い側面を生んだ(ヴィレッジヴァンガードで「サブカルチャー」に足を踏み入れた、という人も少なくないはずだ)。

 商品ラインナップでいうと、ヴィレヴァンはもともと各店舗の裁量によりセレクトされた尖ったアイテムが魅力だったものの、一時期POSシステムの導入によりどの店舗も同じようなアイテムが並ぶようになった。再び、店舗裁量による商品選定が戻ってきているともいうが、こうした一時の変更が与えた影響は大きかっただろう。一方のアニメイトは、出版社とコラボした推し活グッズや隆盛のBL系作品に注力をし、活況を呈している状況だ。

  つまり肝心な商品ラインナップでもヴィレヴァンは「わざわざ感」が失われてしまったのではないだろうか。しかし、この「わざわざ感」に固執すること自体がカルチャーの幅を狭くするのではないか、という批判を承知しつつ、ただやはり、カルチャー企業においては、この「わざわざ感」とどのように対峙するかがポイントになると考えている。

  というわけで、アニメイト好調の理由を「出店戦略」を中心に見てきた。もちろん、その好調の理由は、ここで書いたもの以外にも多くある。ただ、こうして考えていくと、やはりその出店戦略も、アニメイトを陰ながら支えていると思えてくるのだ。

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