昭和の小学生に衝撃を与えた筒井康隆×永井豪による絵本『三丁目が戦争です』復刊へ 50年を経て突き刺さるメッセージ

筒井康隆×永井豪による衝撃の絵本

 『三丁目は戦争です』は加えて、永井豪の漫画のような絵が、そうした大切なストーリーに触れるきっかけになっている。今でこそ教材に漫画が載るような時代だが、最初に刊行された1971年からしばらく、漫画は学校教育の現場から排除されていた。学校の図書館にも漫画は置かれていなかった。そこに、人気漫画家の永井豪が描いた絵が載っていた『三丁目は戦争です』だけは置かれていた。

 筒井康隆は知らない子どもでも、永井豪なら漫画やアニメで『デビルマン』や『マジンガーZ』や『キューティーハニー』を見て知っていた。そんな永井豪の絵がついた『三丁目は戦争です』を図書館で発見した子どもたちは、奪うようにして読みふけった。そして、シンスケの母親が見舞われた悲しい事態に衝撃を受け、涙ぐみ、戦争は嫌だと思うようになった。

 『三丁目が戦争です』を読んでいなくても、戦争について知る機会はいくらでもある。やがて年齢を重ねて世の中のことが見えてくるに連れて、戦争にもさまざまな事情があるようだと分かってくる。「戦争」を避けられないこと、あるいはカッコ良いと思う人も出てくるが、『三丁目は戦争です』を読んでいれば、そうした心理について、「ほんとうに、こまるんですよ」と捉えるところからスタートできる。

 今回復刊された『三丁目が戦争です』が全国の学校図書館に入れば、同じような意識を持った子どもたちが増えて、世界が「三丁目」になる確率を下げられるかもしれない。昭和の小学生たちが受けた衝撃とともに。

 とはいえ現在、永井豪をどれだけの子どもたちが知っていて、手に取ろうと思うかは判断に迷うところだ。『三丁目が戦争です』は、講談社の青い鳥文庫からイラスト付きのものが刊行されているが、時代の寵児として子どもたちにも読まれている漫画家が絵を担当した『三丁目が戦争です』があれば、もっと読まれるかもしれない。

 誰が良いか? 『進撃の巨人』の諫山創だろうか。『鬼滅の刃』の吾峠呼世晴だろうか。2人ならそれらの作品から平和と理解の大切さを学べるが、絵本という体裁だからこそ迫れる層もあるとするなら、当代の人気漫画家による『三丁目が戦争です』のトリビュート企画があっても面白いかもしれない。

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