「異世界転生は落語に似ている」人気作家・中田永一、児童書『彼女が生きてる世界線!』で拓いた新境地
異世界転生モノを書く理由がわかった
――初めての児童書、そして異世界転生モノ。書き終えてみて、何か作家としての発見はありましたか?
中田:思いのほか、アクトという人物が書きやすくて、というのは中身が大人だからなのですが、みんなが異世界転生モノを書く理由がわかった気がしました。未知の領域を描くときにも、主人公の内面性や価値観を自分に近いものとしておいておけるというのは、それだけでひとつのハードルをクリアしているんですよね。
あと、ふだん書いている大人向けの小説よりも、子どもたちの感想がたくさん寄せられるので、励みになりました。桜小路さんが好きです、って言ってくれる子がいたのは嬉しかったな。
――今後、書いてみたい未知のジャンルってありますか?
中田:宇宙を舞台にした作品には興味がありますね。少し前にNetflixで『レベルムーン』という作品を観たのですが、サムネイルをご覧になればわかるとおり、めちゃくちゃ『スターウォーズ』っぽいんですよ。というのもこの監督、『スターウォーズ』をつくりたくてたまらなかった人なんです。
――それでここまで似ている作品をつくるの、すごいですね。
中田:すごいですよね。こんなふうに僕も堂々と好きなものをベースに好きなように書いてみたいな、と思いました。だから今は、『スターウォーズ』風の世界に転生するって物語はどうだろうとぼんやり考えています。
――読んでみたい!
中田:異世界転生モノって、ちょっと落語に似ているというか、基本的にはどれも似た感じの物語にはなるんだけれど、著者によって語り口が変わっていくおもしろさがあると思うんです。
最近はカレヤタミエ先生の『捨てられ公爵夫人は、平穏な生活をお望みのようです』という小説が抜群におもしろくて。悪役令嬢に転生した主人公が断罪されないようにひっそりと過ごす、という物語なのですが、地に足の着いた文体に引き込まれて目が離せない。毎日12時に更新された瞬間、読んでいます。
誰も読んだことのない物語、とは違うかもしれないけれど、そのぶん作家の個性が滲み出る異世界転生モノは、とても興味深いジャンルだと思うので、読者としても書き手としても、追っていきたいと思っています。