【漫画】人生に疲れて「猫になりたい」と願うOLが出会ったのは……SNS漫画『タマとトラの自由論』が優しい

【漫画】タマとトラの自由論

ーー本作を創作したきっかけを教えてください。

ミエタサチ:本作はテーマなどをランダムに提示するサービス「お題ガチャ」を用いて創作した作品です。これまでも「お題ガチャ」を用いて短編作品を描いており、今回のお題は「釣り」でした。

 「釣り」をテーマにした構想案をいくつか考え、案の1つであった変なところで釣りをする話が最も面白くなりそうだと思い、本作を創作しました。

ーーお題からどのようにストーリーを組み立てた?

ミエタサチ:まず登場人物の1人・トラの設定を考えました。彼女は変わった女の子として描くことを決めていたので「猫になりたい」という思い、猫耳を付けている特徴は構想の初期からありました。

 またトラはいわゆる天才タイプだということ、幸せになりたい子どもであるということを意識し、その結果として空想に浸る女の子として描きました。

ーー天才であるが故に生まれる孤独。

ミエタサチ:少し変わった人と天才は紙一重みたいなところがあると思います。

ーーもう1人の人物・たまきさんを描くなかで意識したことは?

ミエタサチ:少し変わった女の子であるトラに関わる人物として、たまきは真面目な人物にしようと思いました。彼女は自由を愛する真面目な人間ですが、要領が悪く、必死に周りの空気を読みつつ生きているーー。真面目だからこそ解放されたいという思いが「猫になりたい」という願いに表れたのだと思います。

ーー真面目だからこそ、自分で苦悩を抱え込む。

ミエタサチ:おそらく、たまきは不満があっても反社会的な行動をとることができない人物だと思います。だからこそ「猫になりたい」という願いは、彼女なりの世の中に対する抵抗だったのだと思います。

ーー虎子さんをこども扱いしない関わり方からも、たまきさんの真面目さ、誠実さを感じました。

ミエタサチ:たまきは最初こそ子ども扱いしていましたが、トラと関わるうちに、大人である彼女はトラの孤独に気がついていったのです。

 その孤独が自身と重なって、無意識のうちにたまきはトラを虎子として、一人の対等な人間として見るようになったと思われます。

ーー印象に残っているシーンは?

ミエタサチ:誕生日のケーキを食べるシーンです。値引きされていないケーキを買うという大人な一面や、人として成熟する誕生日を祝いつつ、それでも「猫になりたい」といった幼い思いが露出するーー。その矛盾が面白いなと思ったので、今でもこのシーンは印象に残っています。

ーー本作では「大人」と「こども」が明確に線引きされていると感じました。

ミエタサチ:私は接客業をしており、さまざまな人を目にするなかで大人に成りきれている大人、成りきれていない大人がいるなという印象を抱いています。たまきは大人になりきれてない大人です。

 ただ大人に成りきれていない人こそ、人間らしさがあると思います。そんな姿を描くことが私は好きです。

ーー今後の活動を教えてください。

ミエタサチ:これまで「幸せ」をテーマに作品を描いてきたので、これからも「幸せ」をテーマにした自分の納得できる短編漫画を描き続けていきたいです。

 富や名声を得ることを目指して漫画を描いているわけではありませんが、自分の作品がどこかの本屋さんで並べられたり、アニメ化したらうれしいという思いはあります。

ーーなぜ「幸せ」をテーマに創作をつづける?

ミエタサチ:1年程前まで少し元気がなく、その頃に考えていたことが「幸せ」についてでした。当時は私自身が幸せを求めていましたが、今は人の葛藤や人間関係など、人の幸せに関するものは、描いていて単純に楽しいです。おそらく今の私は人が大好きなんだと思います。

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