マンガとドラマでヒットを記録『おっパン』作者・練馬ジムに聞くシリアスとギャグのバランス「上から目線にはしたくなかった」

『おっパン』作者・練馬ジムインタビュー

マンガだからこそファンタジーでいい

――ドラマ版も好評でしたが、「伝わる人には伝わる」系のパロディネタは当然調整されますし、誠の性格も少し違いますね。原田泰造さんが演じるドラマ版の誠はやわらかいイメージで、原作版の誠の方が毅然としたイメージがあります。

ネーム担当:実は、ドラマ版の第1話で、誠役の原田泰造さんが土下座しているのを見たときに「あっ、ひどいことしちゃったな……」って、すごく反省したんです。原作でも「お父さんかわいそう」みたいなコメントは結構あったんですけど、まったく気にしていなくて、むしろ「土下座で済むと思うなよ!」くらいに思っていたんですけど(笑)、実写で見てみると、私はわかっていなかったんだなって。社会でちゃんと働いて頑張っている人に、私はなんてことをさせてしまったんだ……と、ちょっと泣きそうになりました。

――その意味で、原作の誠そのままのイメージで再現されていたら、別の違和感が生じていたかもしれないですね。

ネーム担当:そうなんです。だから、実写ドラマとして表現される誠は、原田泰造さんくらい優しさが感じられる方がよかったと思います。

作画担当:脚本としても、ドラマ版はより「家族」にフォーカスされていて。

ネーム担当:そうそう。原作だと、息子の翔くんは夢を見つけていて、学校に行くという展開だったんですけど、ドラマ版の翔くんは何がしたいかまだ決まっていなくて、それを探すために学校に行くんですよね。ドラマの方が、翔くんの成長をわかりやすく描けているし、城桧吏(じょう・かいり)さんの演技も素晴らしくて、「ああ、年頃の高校生ってこんな感じだわ!」という説得力がありました。実写化が難しいキャラクターだと思っていたので、感動しましたね。

――ちなみに、お二人の好きなキャラクターは?

ネーム担当:私は、恋多きカラオケ店員の青井が大好きですね。実際にいたらめちゃくちゃ厄介だと思うんですけど(笑)、素直で、行動力があって 探究心がある。いじっても大丈夫そうというか、叩けばいい音が鳴りそうなキャラクターで。ビジュアルも好きで、すごく動かしやすくて助かります。

作画担当:私は静(その青井に好意を抱くギャルの西郷静)が一番好きなんですけど――。

ネーム担当:え、そうだったの!?

作画担当:好き好き。これまでBL作品を描いてきたなかで、女の子をちゃんと描いたことが本当になかったから、思い入れがあって。髪の毛が長いから線を引く量が多いし、まつ毛もバシバシだし、肌も焼いているからトーンも多いし……ギャル3人が出てくるだけで作画は大変だったんですけどね(笑)。ちょうどアナログからデジタルに移行した時期の作画で、あそこまで細かく描けたのはデジタルだったから、というところもあります。

ⒸZim Nerima/LINE Digital Frontier
ⒸZim Nerima/LINE Digital Frontier

――青井と静という、わりと関係性の深い二人をそれぞれ推しているというのは面白いですね。ドラマ版で好きになったキャラクターはいますか?

ネーム担当:井上拓哉さんが演じた、メンズブラ男子の原西(匠)くん!

作画担当:超かわいかった!

ネーム担当:私の周りも「原西くんがいたら会社行く」って言ってました(笑)。

――さて、冒頭にもあったようにさまざまな意味で「おっさん」に注目が集まる昨今ですが、「時代に順応できていない」「アップデートが必要だ」と考えている人も少なくないかもしれません。お二人は「おっさん」をどう捉えていますか。

ネーム担当:「おじさん/おっさん」というだけで、偉くなきゃいけないとか、含蓄がなければいけないとか、世の中から期待されることが大きくて、求められるイメージとのギャップに苦しんでいる人も多いと思うんです。

作画担当:カッコつけたり、強い自分を見せる、ということが暗黙的に求められるのに、それがハラスメントだと言われてしまう、という難しさもあるのかもしれません。私たちのように創作する側からすると、そんな「おじさん」が抱えている悩みをストレートに聞きたいと思うんです。

ネーム担当:おじさん側も、「最近の若いやつ」に対してフラストレーションはあるだろうし、それでもお互いにかかわらないわけにはいかないじゃないですか。逆に言えば、若者がおじさんに聞きたいこともたくさんあるし、おじさんもそれをなんとかしてあげたいと思っていたり。お互いに煙たがるのではなく、そういう前向きなコミュニケーションが取れるようになるといいですよね。

――結局は人と人だから、相手を尊重しながら、信頼関係を築けるようにしたい。無意味にぶつかるのではなく、誠と大地のような関係性になれるといいなと思いますし、世代間のギャップに悩んでいる方は、『おっパン』を読んでみてほしいですね。

作画担当:ありがとうございます。「こんなのファンタジーだ!」「現実はこんなに上手くはいかない!」と言われることもありますが、マンガだからこそファンタジーでいいと思っていますし、「こういう感じっていいな」と少しでも現実に落とし込んでいただけたら嬉しいですね。

ネーム担当:逆に「教科書にしたい」みたいなありがたいコメントもあるのですが、マンガは大前提としてエンタメであって、義務的に読んでも面白くないと思うんです。読んでみて合わなかったら途中でやめていいし、あまり気を張らずにギャグマンガとして読んでいただけたらいいなと思います。その上で、現実の日常生活で「あ、これ読んだやつ!」となっていただけたら最高ですね。

作品情報:『おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか!』

作者:練馬ジム
URL:https://lin.ee/71qYgEe/pnjo
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