1970年代、茅葺き民家261軒を収めた写真集に注目 日本の原風景と人の営みを感じる内容
高度成長の只中で、急激に姿を消していった日本各地の茅葺き民家の姿を収めた写真集『新版 茅葺き民家』(グラフィック社)が、2024年6月に発売される。1970年代を中心に、人が実際に暮らしている日本各地の民家を訪ね、春夏秋冬の風景を収めた30年の旅の記録だ。
農耕、養蚕、牧馬など、地域の暮らしにあわせた民家の様子、民俗学・建築学の観点から見ることができる本書はとても貴重。今ではもう見ることのできない、日本の原風景と人の営みを感じる261枚が収録されている。
昔から名馬の産地として有名な岩手。囲炉裏で馬の背を暖めて共に暮らした優しい造りの曲り家は、盛岡市から遠野にかけて広く見られた。
しばし見とれてしまうような、美しい線の流れで構成された屋根をもつ秋田の民家。豪農の家だけでなく、山あいの小さな家もそれなりに見事な両中門をもっていた。
福島では浜通り、中通り、会津と言われるように、地形の変化に従ってさまざまな姿の民家が見られた。
寄棟の家が主だが、険しい山あいを行く甲州街道、中山道、深い渓谷沿いの千国街道(塩の道)、豪雪地を行く北国街道など、それぞれ特徴ある姿を見せてくれる長野の民家。また北国街道では、豪雪に備えて屋根面積を少なくした越後風の建て方の家があった。
岐阜には世界文化遺産に指定された合掌造りの民家が。残雪が白く輝く白山を背景に、何層もある大きな合掌造りの家は見事。
東海道、伊勢街道、大和別街道、熊野街道と、多くの街道が行き交う三重平野部の亀山、上野、名張では、銀色に光る瓦屋根とよく手入れされた茅葺き屋根が混在する町家が見られた。
書籍情報
書名:新版 茅葺き民家
著者:佐野昌弘
発売日:2024年6月
仕様:A4変形判 並製 総208頁
定価:3,630円(10%税込)
ISBN:978-4-7661-3908-2