“トンデモ日本史”で賛否両論の『将軍』なぜドラマ化に成功? 世界観で圧倒する“新しい時代劇”の可能性
そこには無論、今回のドラマ版の中心に位置する虎永を演じると同時に、プロデューサーにも名を連ねている真田広之の尽力も大きかったのだろう。日本からスタッフを招聘し、カツラや鎧、武具、衣装はもちろん、それぞれの役の所作に至るまで、徹底的に目を配ったという真田。思うに、これほどの予算と手間をかけて作り込まれた「時代劇」は、史上初なのではないだろうか。日本人ですら観たことのなかったような「解像度」の「時代劇」。とはいえ、その「プロット」部分の「解像度」については、依然として少々疑問に思うところもないわけではない。原作や以前のドラマ版よりも遥かに熟慮のあとが見受けられるとはいえ、やはり「切腹」シーンが多過ぎる。逆に言うと、前作から40年以上を経た今もなお、それが西欧人たちの尽きない興味の対象なのかもしれないが。言わば、独特な死生観のようなもの。それがこの時代の武士のあいだで、どこまで一般的なものであったかは、また別途議論が必要だとは思うけれど。
だが、本作においては、それでいいのだろう。今回のドラマ版で重要なのは、「プロット」以上に、その「世界観」で圧倒することなのだから。それが、今回のドラマ版の成功の何よりの要因なのだろう。この「世界観」は、海外の人々はもちろん、日本の人々も魅了する。そのことを改めて証明してみせたのが、本作『SHOGUN 将軍』の意義であり「現代性」なのだ。果たしてその「成功」は、今後のドラマや映画の潮流に、どんな影響を与えていくのだろうか。ひとつのジャンルとして、改めて世界的に広がっていくのだろうか。物語の結末はもちろん、そのあたりのことも、歴史・時代小説ファンとしては大いに気になるところだ。