『東京リベンジャーズ』稀咲鉄太は“裏主人公”? 作中随一のダークヒーローが持つ有能さと異常性

『東リベ』稀咲鉄太というダークヒーロー

※本稿は『東京卍リベンジャーズ』のネタバレを含みます。原作未読の方はご注意ください。

 アニメの第3期「天竺編」が12月26日に最終回を迎え、2024年以降の第4期が期待される『東京リベンジャーズ』(東京卍リベンジャーズ)。本稿では、主人公・タケミチの敵として現れ、天竺編でも深い印象を残した稀咲鉄太というキャラクターを掘り下げたい。不良特有の派手さも、人目を惹くようなカリスマ性も持ち合わせてはいないが、頭脳明晰で人身掌握に長けた稀咲は、『東リベ』の中で最も厄介なキャラクターだと言える。

 多数の人間を振り回した稀咲には、誰にも真似できぬ有能さと異常性が備わっている。裏の世界に潜む邪悪なヒーローとして君臨した彼、唯一無二のサブポジションを極めた理由に迫っていこう。

頭脳とともに強靭なメンタルを持つ名脇役

 先読みの能力と、頭の切れが特徴的な稀咲。頭脳明晰なだけではなく、何度でもめげないメンタルも立派な強みだ。

  『東リベ』に登場するキャラクターの中で諦めの悪さはトップクラスであり、悪役特有のしぶとさは彼を象徴する一つの魅力にもなっている。根強く何度でも挑戦するその姿は、タケミチと通ずるものがある。

 「月は一人で輝けない」なんて名ゼリフがあるが、自分だけではどうにもならない現実を本人はよく分かっている様子。己の限界値、自身の弱みを把握するからこそ、足りない部分を補うべく周囲の人間を巻き込む。なんと要領がいい人間なのだろうか。中学生らしからぬ冷静さを持ち、特有の落ち着きが分析力の高さや第三者的目線を補う理由になっているのかもしれない。

 人を操る能力も高く、相手の心にヌルリと入り込む技も心得るが、生憎稀咲はマイキーのように人望を集めて称賛されるようなタイプではない。ドラマでいうところの名脇役のような立ち位置であり、永遠のナンバー2、ナンバー3がよく似合う。本人も表立った総長より裏での活躍を強く望む。誰よりも自己分析が得意で、ほしい立場を戦略的に手に入れる力を持つ侮れない男だ。

 組織は人情家でキラキラとした主人公タイプばかりだと成り立たない。稀咲のような頭脳派の名脇役は集団で戦う際に必要不可欠で、時に大将クラスよりも良い働きをすることも多い。特に稀咲は脇役と言えど「裏の主人公」という言葉がよく似合う。

 ほどよく組織をコントロールできるポジションに堂々と座りながら、陰で自由自在に動き、人々を掻き回していく稀咲。『東リベ』には頭がよく回る頭脳派が続々と登場するが、やはり稀咲鉄太はぶっちぎりのナンバーワンだろう。

 総長の器はないが、歌舞伎町の死神・半間にやたら興味を示されるなど、人の関心を惹くのも巧い。だからこそ、「頭の回る嫌味なヤツ」で終わらず、浦番長のような存在になれるのだ。

異常性が育った理由は“嫉妬”と“憧れ”

 かつては大人しい子どもだった稀咲。現在の暴れっぷりが想像できぬほど消極的で、不良とは程遠い人生を歩んでいた。しかし、橘日向(ヒナ)に恋心を抱き、タケミチに片想いの相手を奪われたことをきっかけに運命の歯車が狂い始める。

 初めての感情に戸惑っただろうに、そこで“陽”のオーラを放つタケミチに彼女を取られてしまった。自己分析ができる稀咲にとっては衝撃的な出来事である。なぜなら自分に陽の道は似合わず、決して勝てない現実を理解できてしまったからだ。決定的な描写はないが、もしかすると陰気な自分に激しいコンプレックスを抱いていたのかもしれない。己と180度違うタケミチが不良の道へ逸れたのをきっかけに、稀咲もまた日本一の不良を目指すことを誓う。

 結局のところ異常性が育ったのはタケミチへの嫉妬と、ちょっとした尊敬の念(憧れ)が原因である。失恋のパワーはなんと恐ろしいのだろう。彼の場合、恋に破れた事実だけがエネルギーの源ではないものの、全ては“羨ましさ”が関係している。

 いずれにしても、稀咲は腕っぷしの弱さをその頭脳で見事にカバーし、異常な目的意識と達成力で不良としての力をメキメキとつけていった。

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