『呪術廻戦』釘崎野薔薇、なぜ“悔い”がない……芥見下々が描く女性キャラの特徴とは
※本稿はアニメ『呪術廻戦』の内容を含みます。ネタバレにご注意ください。
現在放送されているアニメ『呪術廻戦』は、呪術師と呪霊たちが地獄絵図を繰り広げるエピソード「渋谷事変」の真っ最中だ。そこでメインキャラクターの1人、釘崎野薔薇には壮絶な展開が待ち受けており、衝撃を受ける視聴者が相次いでいた。
ところがそんな状況下で、釘崎は自身の生死に頓着する様子を見せず、「悪くなかった」という名ゼリフを発してみせるのだった。なぜ彼女の生き様はかくも気高いのか、作者・芥見下々の作風にまで踏み込んで考えてみたい。
釘崎は虎杖悠仁と同じ呪術高専東京校の1年生。呪術師としてはまだ駆け出しだが、呪術師の家系に生まれたことから、幼い頃から呪いとの接点があった。しかし彼女の覚悟が異様なまでに決まっているのは、そうした下積みではなく、むしろ自ら選択した生き方と強い意志の影響が大きいだろう。
単行本1巻で描かれた初登場エピソードによると、呪術高専に入った理由は、「田舎が嫌で東京に住みたかったから」。一見軽薄に見えるが、釘崎にとっては「私が私であるため」に必要なことであり、それは命をかけるに値するほどだという。
元々釘崎は田舎の村で暮らしていたが、そこで東京から引っ越してきた“沙織ちゃん”という人物との出会いを果たし、人格形成に大きな影響を受ける。しかし彼女は余所者であっただけで閉鎖的な村社会から迫害され、やがて追い出されてしまう。釘崎もまたそんな環境に馴染むことができず、自分の居場所を作るために東京へとやってきたのだった。その覚悟の強さは、村にいたままだったら「死んだも同然」と考えるほどだ。
なお、『呪術廻戦 公式ファンブック』では釘崎が東北出身でありながら、話し言葉が一切訛っていない理由について、「母が訛っていないから」と説明されていた。このことから、釘崎の母が標準語を話す地域から嫁いで村にやってきた人物だと推測できる。
アニメ第43話「理非-弐」で描かれた過去回想では、“ふみ”というもう1人の少女の視点から、釘崎と母の関係性が示唆されていた。おそらく釘崎が閉鎖的な村に反発していたのは、沙織ちゃんと同じように余所者だった母の影響もあるのだろう。
いずれにしても釘崎は自分らしく生きられる場所を求めて、東京で呪術師となった。そしてその選択は、決して間違っていなかった。極限状態にありながら、笑顔を浮かべて「悪くなかった」と言い放つことができたのは、幼少期から探し求めてきた“自分の居場所”を呪術高専に見出したからに他ならないはずだ。