里崎智也に聞く、書籍『下剋上球児』の魅力「監督、選手、学校、地域が一丸で成し得た壮大な下剋上」
勝者のメンタリティに入るには?
――では、好評のドラマ版『下剋上球児』では、大きな失敗をした主人公を鈴木亮平さんが演じています。野球に失敗はつきもの。里崎さん的な考えは?
里崎:僕は世の中に失敗なんてないと思っています。もちろん、野球にもエラーとか、三振、凡打などはある。でも、それはプロセスの一環です。ヘタクソだから練習する。できたことを試合で試す。うまくいかないところをまた練習する。そういうプロセスがある。
――野球に限らず、できないことは、そうしてできるようになるものですね。
里崎:成功への過程における失敗は必ずあるものです。でもね、それは失敗じゃない。確認のために必要なプロセスです。勉強も同じでしょ? 98点とっても、ひとつの失敗があることになる。でも、そこを確認し、埋めていくことで強くなる。それが成長ですよ。
――失敗を恐れなくていい?
里崎:同じ失敗したらダメですよ。そのプロセスがおかしいと考えるべき。失敗はしていい。でも、修正するんです。それをあきらめたら、成長はない。本当の失敗になる。
――そうならないためには?
里崎:死ぬほどやれとしか言えない。成果が出てないのは、やってないからです。でも、「努力」と思っている間はまだダメです。会議あるから資料つくる会社員は努力ですか? 違いますよね、必然です。必然をやる。それができないと一流にはなれません。
――歯を食いしばってヘロヘロになっていることだけが努力のように思いがちです。
里崎:どんなにがんばったかなんかは、評価にならないんですよ。結果がすべて。結果が出ると、そこから逆算して、そこまでのプロセスが意味を持つ。だいたいね、僕は「がんばって!」言うのが嫌いです。
――まあ、みんな言いますが……。
里崎:「がんばれ!」のリアルな同義語は「結果出せ!」ですよ。がんばらなくても、結果出てればいいのが社会です。
――まあ、バッターが打ちまくっていれば、「がんばって」くれていることになる。
里崎:僕はね、走るのが苦手でした。で、練習中必死に走ってると、「がんばれ」と言われるんです。トップ走ってるヤツには絶対言いません。「がんばってるに決まってるやろ!」とイラっとすることも多かった(笑)
――まあ、何か応援したいんですよ。
里崎:だったら、「応援してるよ」とか「期待してるよ」と僕は言う。しんどそうなヤツに「がんばれ」はいらない。彼らはもうがんばってる!
――走るのが苦手な里崎さんも、やるしかないからやった?
里崎:結局、結果を出すしかない。勝つしかないんです。そうすると、勝ち方がわかる。そこまでのプロセスの検証もできる。自信も生まれる。それが勝者のメンタリティです。マンガを描くんだったら、完成させる、とかね。でも、負けると、そこまでのプロセスが間違いだったか、量が不足しているかの二択を迫られる。霧の中を歩くようなもので、次に向かえない。
――勝った白山高校の選手たちは、そこに至れたのでしょうね。
里崎:練習して、試して、勝っていく中で、勝者のメンタリティに入れたのだと思う。そういう強くなっていく循環は、たしかに、この書籍版『下剋上球児』にもあります。ドラマを見て興味を持った人は、ぜひ、読んでみてほしいですね。