【漫画】少年が出会ったのは多次元を行き来するお姉さん? 不思議な設定のSF漫画が話題
――手塚さんは会社員として課長を勤めながら、漫画家をされているとのことですが、今もお変わりはありませんか?
ピエール手塚(以下、手塚):そうですね。課長として働きながら、合間に漫画を描いて連載しています。
――本作の反響は?
手塚:ややこしい話なので内容的に難しいかなと思っていましたが、意外と理解してもらえた様子でよかったです。「理屈はわからないけど話の本筋、感情的な部分はわかって面白かった」という意見もありましたね。
――着想についても教えてください。
手塚:毎回タイトルを決めて話を考えていくのですが、本作はSNSで話題になっていたトピックから着想を得ました。年上のお姉さんが男の子のことを固有名詞ではなく「少年」と呼ぶ物語です。その両者の立場が変われば違う呼ばれ方になるのか、ということを色々考えていて。
そのなかで最も変なものを題名にしようと。そこで思いついたのが「お姉さんが多次元の存在だったら、人間のことを『三次元』と呼ぶのでは?」という話で、これを採用したんです。下書きなしで描いているので2、3日ほどで描き終えましたね。
――もともと知られている物語の型を利用した作品でもあるのですね。
手塚:自分のなかの「あるあるネタ」を、どれだけ「ないないネタ」にできるかに挑戦しています。みんなが知っているベタな枠組みの中で、全然知らない話を描けたらと。
――多次元については以前から前々から考えていたのですか。
手塚:時間の概念についてはテッド・チャン『あなたの人生の物語』と、それを映画化した『メッセージ』に登場する、現在・未来・過去を同様に見える存在が参考としてありました。あとは使いどころがなかった「タイムトラベルも物理法則に基いているなら、時間軸方向の作用反作用がないと成立しない」というネタもストックとしてあって。キャラクターにはできないけど、読者は時間を遡れる。そんな時間の概念の不思議さは最初から描きたいなと。
――中盤で少年のいきさつが判明してから物語が急にエモくなっていきます。
手塚:描きながらお姉さんが何者なのか、まったく考えていませんでした(笑)。でも、どうやって話が終わるのかと考えると、「両者の間には何かがあってほしい」と考えていたら、この展開になったんです。最終的にはお姉さんが去った後にピースを残す、という結末。
同人誌の場合は短いページでまとめなければいけないので、結末をどうするかは難しい点でもあり、考えていて面白い点でもあります。
――「たくさんのパラメータが一致しないと会えない」などの印象的なセリフもしばしばありました。
手塚:同人誌用に作った作品なので、個人的に一番しっくりくる言葉を選んでいます。同人誌は売るよりも「漫画ができたから自分用に紙で刷りたい、でもせっかくだし他の人にも配れたら」という感覚なんですよ。みんなと同じタイミングで本を作るのも遊びとして楽しい。だから続けてます。
――今後の活動についても教えてください。
手塚:連載も1本になり若干余裕が出てきたので、色々なところで読み切り作品を描こうと思っています。今まではキャラクターが喋ることで展開する漫画が多かったので、それ以外のアクション性の高いものにチャレンジできれば。