【ONE PIECE考察】ガープ中将は“次世代”に何を託したのか? その偉大なる功績と影響力

『ONE PIECE』ガープの偉大さ

 これ以降、ガープというキャラクターの複雑さは増していく。幼少期のルフィや、海軍将校を目指して入隊してきたコビーらを鍛えた点についてはここでは置いておこう。言及したいのはその人物像だ。

 かつて海賊王であるロジャーから託されたエースが死に、海兵に育てたかった孫のルフィはさらに海賊として名を上げていく。コビーやヘルメッポら愛弟子たちは着実に力をつけてきたが、それはときに危険なミッションに放り込まなければならないことを意味するだろう。実際、コビーはもっとも危険な黒ひげ海賊団の囚われの身に。そして、コミックス最新刊である107巻第1081話「黒ひげ海賊団10番船船長クザン」では、一番弟子のクザン=青キジが反旗を翻し、黒ひげ海賊団への加入が判明。交戦しなければならないことになった。その心中は察するに余りある。もはや不条理の領域だ。

 そんなガープはかねてより、“未来”や“次の世代”のことを第一に考えてきた人物でもある。時代が変われば人々の価値観はガラリと変わる。上の世代の者が下の世代の者たちに教え諭すのには限界がある。そして「正義」というものは環境によって変わる。ガープの存在をとおして、私たちはこの真理に触れるのだ。ルフィは海賊然とした海賊ではない。彼が目指すのは誰よりも自由な存在。海賊とは敵対関係にある祖父を振り切り、自由を求めて海へ出た。ガープの存在があることで、『ONE PIECE』が持つ主題はより際立つのだ。

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