【漫画つき】傷心で訪れた女性用風俗、現れたセラピストは自宅の家政夫でーー現代女性の性と恋愛を描く『やさしいミルク』がスゴい

【漫画】やさしいミルク

 35歳の女流小説家・青葉よもぎ。作家として崖っぷちの彼女は、女性編集者から「女性用風俗」をテーマに書かないか、という提案を受けていた。長年、男女の関係にあった東雲からの突然の結婚報告にショックを受けていたよもぎは、勢いで女性用風俗へ。そこに現れたセラピストは、よもぎが家政夫として雇っている青年・金城でーー。

 「女性用風俗」をモチーフに大人の恋愛を描き、10月16日発売のコミックス第2巻も好評を博している『やさしいミルク』(月刊漫画誌「Eleganceイブ」にて連載中)。リアルサウンドブックでは、この話題作を手がける高田ローズ氏にインタビューを行い、創作の背景を聞いた。まずは第一話を読み、現代女性の性と恋愛を細やかに映し出す本作がどのように生まれたのか、作者の声に耳を傾けていただきたい。(編集部)

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©︎高田ローズ(秋田書店) 2023
©︎高田ローズ(秋田書店) 2023

ーー「女性用風俗」という、とてもフックがあり、かつ女性のQOLという観点からも切実なモチーフが描かれています。どのようにこのテーマに辿り着いたのでしょうか。

 数年前から「女性用風俗」をテーマに漫画を書いてみないかという依頼をしていただくことが何度かありました。体験談がベースなら面白そうだと思いましたが、フィクションではどう書けばいいのか思い浮かばずお断りをしていました。前作『10年シてないスダチさん』の連載が終わり、新企画を考えなければいけないタイミングで、「女性用風俗」を書いてみてもいいかもという気に急になり、『やさしいミルク』1話にあたる部分の設定とあらすじを思いつきました。知り合いから女性用風俗を利用した話を聞き、一気に身近に感じたことが大きかったと思います。

  家政婦や風俗といった従来は女性が多くを担っている部分を、この漫画では金城という男性キャラが担っています。多様性を意識したというよりも、「このシチュエーションで男と女の立場が逆転したらどうなるんだろう」といった純粋な疑問や興味があります。また、一つ屋根の下に男女が二人きりになる時、同じ人間なのにその時の肩書きや立場(家政夫/セラピスト/恋人/仕事仲間等)で、その空間の意味や雰囲気、言動が変わることに面白さを感じていて、そこを意識して書いています。

ーー主人公の青葉よもぎは作家という読者にとって非日常的な存在でありながら、深く共感できるキャラクターです。どんな思いで生み出され、またどんなことに注意して描いていらっしゃいますか。

 前作『10年シてないスダチさん』の主人公がわりとあけすけで、年齢の割に思い切ったことをするキャラクターだったので、今作は常識があって一般的な感覚がある人物を意識して書いています。特に共感してもらおうと思って書いたキャラクターではないですが、「作家だからこういう性格」ということは考えていなかったので、それが結果として共感につながったのかもしれないです。

ーー金城はミステリアスながら優しく穏やかで、悲しみに寄り添う人物です。モデルになるような人物がいるのかも含めて、キャラクター造形について聞かせてください。

 モデルはいません。主人公に対して初めからまっすぐ優しく接してくれる男性のキャラクターを今まで描いたことがなく、結構苦戦しながら書いています。ただ優しいだけではなく、その中にに得体の知れなさが少し感じられると、魅力的に見えるような気がしています。

ーー東雲は金城とは対照的に見えますが、こちらも能力が高く求心力のある人物です。どのように生まれたキャラクターでしょうか。

 漫画や創作物の中で「ずるい男」「悪い男」と言われるような人が好きでこうなりました。独占欲が強かったり、虎視眈々と生きてる人に萌えてしまいます。そういう男性がふとした時に見せる弱いところや好意にぐっとくるので、今後そういう部分も書けたらいいなと思います。

ーー大人の恋愛漫画というイメージで、「仕事/生活」についての描写もリアリティがあります。ロマンス以外の部分で作話上意識していらっしゃることはありますか。

 世界観があると多くの方に読んでもらえるという話を編集の方から聞いたことがあり、家の中や服装などの描写は前作より意識して書くようにしています。

ーーセラピスト、あるいはホストのようなお仕事にも共通することかもしれませんが、虚実ありながら、人の心にアプローチする存在だと思います。“癒し”を超えた愛、ロマンスを描く上で、注意されていることはありますか。

 現実的に考えたときに、セラピストと客という関係から恋愛に発展するというのは、なかなかあり得ないことのように感じます。連載が進んで、雇用主と家政夫という関係から、客とセラピスト、小説家と取材対象、と新たな関係になってきているので、「それぞれの人生を生きてきた人と人」という前提を忘れずに、読んでいて楽しめるようなものを書こうと思っています。

ーーこの記事をきっかけに『やさしいミルク』を知る人もいると思います。これから原作を読み始める人にメッセージをお願します。

 女性用風俗を題材に扱う漫画で体験談がベースではないものはまだあまりないと思います。主人公が独身という設定も結構珍しいと思います。私自身もこの先二人の関係がどうなっていくのかわからず書いている部分があるので、そういうところもドキドキしたり楽しんでいただけると嬉しいです。

ーーそして、連載を楽しんでいるファンに対しても一言お願いできますか。

 いつも読んでくださってありがとうございます! 皆さんが読んでくださったおかげで今年も漫画を描けています。これからもよろしくお願いいたします。

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