【漫画】内向的な男子大学生がメイクに挑戦したら? 新しい世界が拓けるメイク漫画に大反響

――多数の反響があると思いますが、ご自身としてはいかがですか。

糸井のぞ(以下、糸井):普段の投稿がバズることが少ないので、たくさんの方に読んでいただけたのが嬉しいです。前回も1巻の発売の時も38歳のサラリーマンを主人公にした別の話をアップした時もバズりましたが、今回は20歳の大学生の話でチャレンジへの共感の声が多かった印象でした。

――メンズメイクを取り上げようと思った理由は?

糸井:編集者さんからの企画を提案していただいたのが始まりです。美容誌「VOCE」のウェブ媒体での連載ということもあったのかと思います。私個人は老いや加齢を感じ始める38歳男性に興味があったので描きたいと感じましたね。そういう時期の考え方や行動の変化として、メイクや美容を描きたくて。あとは美容オタク・タマちゃんとの恋愛関係ではない、男女の師弟関係も描きたかったポイントでした。

――描く上での苦労などもあれば教えてください。

糸井:男性キャラクターとはいえ、38歳の場合は加齢という概念によって私も感情移入しやすかったのですが、20歳の感覚はだいぶ忘れていたので距離感がありましたね(笑)。そのズレを修正するために、その年代の男性にインタビューしたんです。実際にしていたり、彼女に化粧水を借りたという話を聞けたのは参考になりました。

――実際の話を聞いて、カルチャーショックは感じませんでした?

糸井:みんな礼儀正しくて、当たり前ですが色々と考えているなという印象でした。あとは化粧水を付けている方が圧倒的に多い。恐らく付けてないと乾燥が気になる、あの不安を覚えてしまったのだろうなと(笑)。私たちの年代の男性とは身だしなみのラインが変わったのかなと思いました。

――主人公に推しのアイドルがいて、ポッドキャストを聴く、という設定も今時でしたね。その辺りも意識を?

糸井:私の年代も情報を得る時にポッドキャストを聞いたりはするので、彼らも自然にそういうものに触れているんじゃないかなと。誰かが自分の推しの話をしているのも気になりそうですし。そういうコンテンツで内面は充実しているけれど、外側の自分とズレが生じた時にメイクと出会って外にも向かっていくという物語にしたかったんです。美容室で芸能人と同じ髪型にしても決して芸能人と同じにはなれないけど、その行動自体にすごく意味があると思うので。

――男性の美容を取り巻く現状について、どう捉えていますか。

糸井:メンズメイクを扱う店やブランドが増えたなと実感しています。あとは化粧水と乳液より先まで行く男性がどこまで増えるかですよね。ただ美容のいいところって今まで見なかった自分の顔や身体のパーツに興味を持つことによって、昨日と今日の変化に気付きやすくなる点にあると思うんですよ。自分を知ることがセルフケアに繋がっていくのだと思います。

 本作もあくまでセルフケアの提案なので、メンズメイクを押し付ける感じにならないバランスで描くのは大変ですね……(笑)。まずはいつもより泡を丁寧に立てて洗顔して、「今日は調子がいいな」とか「ここは毛穴が詰まっているな」と感じながら洗うとか、そういう意識から始めたらいいのかなと考えています。男性同士で「どんな化粧水使ってる?」と話してみるのもいいかも。

――今後、シリーズで描きたいことなどがあれば教えてください。

糸井:メイクによって、38歳の主人公は自分の内面を知り、20歳の主人公は内向的なキャラが外に向かっていく、という世界観を描いていきたいですね。両者から「美しく見せる」以外の美容を見せられたら嬉しいです。

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