旅鉄車両ファイル『国鉄ED75形電気機関車』刊行 制御方式から交流電気車の発展の歴史を考察

『国鉄ED75形電気機関車』を刊行

 国鉄の交流電気車技術の発展に焦点を当てつつ、交流電気機関車の決定版となったED75形を詳しく解説する、旅鉄車両ファイル『国鉄ED75形電気機関車』が8月16日に刊行された。出版社は、インプレスグループで鉄道・旅・歴史メディア事業を展開する株式会社天夢人。

 本書はカメラマン・鉄道テクニカルライターの高橋政士氏が、長年追いかけてきたED75形について解説するともに、以前から温めてきた「制御方式から交流電気車の発展の歴史を考察する」企画を具現化した。

 日本の電化路線には、直流、交流50Hz、交流60Hzの3種類の電源がある。戦後、全国の直流電化を進めた国鉄では、1950年代に地方幹線の電化方法として地上設備を安価に抑えられる交流電化に着目。まだ世界的にも開発途上の技術だったが、1954年に試作車が完成し試運転を実施。1957年には北陸本線で世界初の交流60Hzによる営業運転を開始した。電流の制御に当初は水銀を使用していたが、その後、半導体技術が急速に進化し、1963年に本書の主役であるED75形が制御方式に半導体を用いて完成。試作車の誕生からわずか9年で、日本の交流電気車は完成の域に達したのだ。

 ED75形は全302両が製造され、東北地方の東北本線、奥羽本線、常磐線を中心に活躍した。しかし、老朽化や運用効率化による置き換え、旅客列車の電車化などで数を減らし、現役車両はJR東日本の5両のみ。本書では秋田総合車両センター南秋田センター所属の777号機を取材し、詳細なディテールを掲載している。

 また、青函トンネル向けに改造されたED79形、九州・北海道向けの改良型・ED76形についても取り上げ、交流電気機関車を概観できる構成になっている。これまでの電気機関車の本とは違う視点からED75形をまとめた一冊だ。

 第1章では国鉄の交流電気車史を掲載。技術史の中でのED75形の位置付け、その後の技術発展についても解説してしている。

 第2章ではED75形の概要と、技術面の解説です。技術的な特徴のひとつ、ジャックマンリンク台車は図面や図解だけでなく、下から仰ぎ見た取材写真を交えて解説。

 第3章では、ED75形を番代ごとに解説。大きく改良された700番代は、第4章の取材記事を前に、技術的な変更点を詳しく解説する。

 第4章では「ED75形のディテール」として、最後の5両のうちの1両で、現役で最後の番号となる777号機の取材写真を掲載している。

 第5章では、青函トンネル用機関車として、ED75形700番代から改造されたED79形を取り上げている。改造車という点から技術面で注目されることは少ないが、実は国鉄の交流電気車の集大成ともいえる内容になっている。

 第6章はED76形を九州向けにしたED76形0・1000番代と、北海道向けであり、ED75形700番代へとつながる技術となったED76形500番代を取り上げている。

■書誌情報
書名:旅鉄車両ファイル009 『国鉄ED75形電気機関車』
仕様:B5判 144ページ
定価:本体2970円(税込)
発売日:2023年8月16日
全国書店、オンライン書店のAmazonなどで発売中。
https://amzn.to/3q1pi6t

 

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