【漫画】名画に感動できない美大生に教授が伝えたメッセージ 美術鑑賞について考えさせられるSNS漫画

――この題材を描こうと思った経緯から教えてください。

秋野ひろ(以下、秋野):これは実体験なんです。教授の話が美術教育に関する学びとして新鮮で、日記感覚で描いておこうと思ったのがきっかけでした。最初に描いたのは4年前で、本作はそれを書き直したものなんですよ。

――もともと大学では美術教育を専攻されていた?

秋野:僕が専攻したのは、教育学部の中で美術教育を学ぶコースだったんです。制作系の先生から彫刻を学んだり、他の先生から美術史や教育としての美術も学びました。今は漫画制作と並行して、非常勤講師として中学生に美術を教えています。

――当時の教授の話を今考えて、どう思われますか。

秋野:大学で色々学んだ今では「人と違う感想を持つ」ことは当たり前だと考えています。でも振り返ると、むしろ自分が「同じでないとダメ」という抑圧に悩んでいたことが意外に感じました。

当時の僕もそうですが、美術に関することでは天才への信仰が強い気がします。「天才の描いたものはすごすぎて、自分たち凡人には理解できない」というような。その結果、僕も「作品の良さがわからないのは自分が凡人なせいで、偉い人の言ってることが正解だ」と思考放棄してしまったんです。

教授から作品の鑑賞の方法や美術の歴史を学べたことで、作品のわからなさを理解しようとする姿勢を保ちつつ、一方で自分の感想については他の人に合わせなくていいんだと思えるようになったかなと。

――今、YouTubeでは絵の描き方を教える動画も数多くあります。そのような状況を美術教育者としてはどのように捉えていますか。

秋野:現代アートを解説してるYouTuberなどに触れている子は、知識の前提があって話しやすいなと思いますね。

一方で、喋りながら絵を描く様子を配信している方の「何でも自由に描いたらいいよ。それは君にしか描けないものだからね」みたいな言葉に引っ張られている子を見た時は少し困りました。間違ってはいませんが、授業のなかで制作するときは学びのための目標があって、そのために設定された枠組みがあるんです。
だから、本当に何でもいい訳ではないんですよ。元ネタの教授もよく言っていましたが、「美術」や「美術教育」、「日常で絵を描くこと」でそれぞれ目指していることがかなり違っていて、そこを伝えるのが難しいなと思います。

――次回作のアイデアなどがあれば教えてください。

秋野:教授の言っている美術教育を広げられるような漫画だったり、天才ではなく地に足が付いたアーティストが活躍する漫画を描いてみたいと思います。

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