【ホラー漫画】非日常的な世界観で人間の本質を描く、菅原圭太作品の恐ろしさーー『隣町のカタストロフ』レビュー

ホラー漫画『隣町のカタストロフ』レビュー

 何も悪いことをしていない主人公が、理不尽な事態に巻き込まれるのはホラー作品の定番だ。有名なエンターテイメント作品を例に挙げたい。漫画なら『ミスミソウ』(押切蓮介/ぶんか社)、小説なら『黒い家』(貴志祐介/KADOKAWA、当時は角川書店)、映画なら『ファニーゲーム』(1997年/オーストラリア/ミヒャエル・ハネケ監督)など思い浮かべる人は多いのではないだろうか。

 現代も活躍するホラー漫画家なら伊藤潤二が有名だ。2023年で画業35周年を迎え、関連書籍やイベントが続々登場しているのは、ファンとしてうれしい。一方で私には、「ホラー漫画を語るうえではずせない」と感じている漫画家がいる。以前、漫画評も書いた『家族対抗殺戮合戦』の作者、菅原圭太だ。テレビドラマ化された『走馬灯株式会社』(双葉社)の作者と言えば、知っている人もいるかもしれない。しかし菅原の名作は、これだけではないのだ。

 菅原作品は主人公を突如異次元に飛び込ませ、彼らの本当の姿を暴いていき、どの作品もホラーとして非常に秀逸なラストが待っている。そのなかのひとつ、天地が逆転した「地変天異」の世界で織りなされる『隣町のカタストロフ』(双葉社)を紹介したい。

 ある日、天と地が逆転したら、あなたはとっさに何をするだろうか。地震かと思って机の下に入るだろうか。大きな家具にしがみつくだろうか。側にいる大切な人を守ろうとするだろうかーー。そんな自分を見ている誰かがいても、自分を守ることに必死ですぐに気づくということはまずないだろう。

 日本にある3つの街だけが、地上と空がさかさま、つまり「地変天異」になってしまった『隣町のカタストロフ』の前半では、さまざまな登場人物が各エピソードの主人公となって急にさかさまになった世界でパニックになる。

 最初のエピソードは、高校の野球の試合で失敗をしてから、ずっとニートになっている青年が主人公だ。

 地変天異によって極限の状況下におかれた彼だが、彼は隣の家の幼なじみの少女を助けようと奮闘する。彼女と自分は、試合で失敗しなければつき合うはずだったと信じて今まで生きてきたのだ。実際にそうだったのかがこのエピソードの肝である。

 次のエピソードでは、隣の家の女性にいやがせを受けながらも、お互いを大切に思い合う家族が中心人物でなる。一見心あたたまるエピソードに見えるが、地変天異の危機にさらされているのは変わらない。

 地震よりも酷い状態なので、即死する人も多い。そしてそんな時こそ生きている人間の本性が現れる。異世界のホラーであり、サイコホラーでもあるのだ。

 後半になると物語は様相を呈する。レギュラーキャラが出てきて、人間関係が混ざり合い、前半のエピソードよりも濃く長い物語が織りなされるのだ。

 だいたいのコミックアプリでは前半、もしくは後半の始まりまでしか読めないが、前半を満喫したあと、私は後半である危険人物を見て目が離せなくなった。この人物によって、本作はホラーの要素を増していくのだ。

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