【ホラー漫画】非日常的な世界観で人間の本質を描く、菅原圭太作品の恐ろしさーー『隣町のカタストロフ』レビュー

ホラー漫画『隣町のカタストロフ』レビュー

 ホラーの楽しみとは何か。日常にひそむ怖さももちろんある。しかし作者の菅原敬太は地変天異のような非日常を舞台にして、そんなとき人はどうなるのかを残酷に描く。

 これは菅原のほかの作品、『走馬灯株式会社』、『鉄民』、最近、完結したばかりの『家族対抗殺戮合戦』を読んでも明らかだ。パニックになったあげく何をするのか。その行動や言動こそが、私たちひとりひとりの個性であり、隠れた本性でもある。

 本作でも現実では絶対に起きてほしくない「地天変異」が、本作の前提となり、それによって多くの人が狂わされていく。私もこんな目に遭ったら……と想像してみる。冷静にはなれないし、混乱しすぎて周囲の人や物を見る目も変わってしまうだろう。

 舞台を非現実的なホラーにしてから、人間の持つ怖さを生々しく読者に見せる。これこそが菅原作品の魅力なのだ。そして菅原はどのように物語を終わらせるかに対しても、ためらいがないように感じられる。時に読者が「絶対にこうなってほしくない」と感じる結末をにおわせ、時に衝撃の事実を露わにする。すべての菅原作品を読み終えた私は、ラストに近づくにつれて恐ろしくなり、想像以上の結末に戦慄する。

「まさかこうなるなんて」

 どの菅原作品も、いつも私は息をのむ結末にたどりついて、菅原圭太という漫画家の凄みを感じる。ホラーエンドとひとくちに言っても、どの菅原作品も雰囲気から内容まで異なるからだ。地天変異を題材にした本作の結末までぜひ見届けてほしいが、まずはコミックアプリの無料話までその雰囲気を味わってからでも良いだろう。一度入れば抜け出せなくなる菅原ワールドに、気づけば自分も飛び込んでいることに気づくはずだ。

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