ファーブル生誕200年記念 子ども向けに最適な入門書「ファーブル昆虫記 名場面集」刊行

ファーブル昆虫本

 『ファーブル昆虫記 名場面集 I』『ファーブル昆虫記 名場面集 II』(奥本大三郎 文/今森光彦 切り絵)という書籍が偕成社より7月上旬に刊行された。昆虫の生態観察を克明に描いた名作を、気軽に読める入門書となっている。

 『昆虫記』は、フランスの博物学者、ジャン=アンリ・ファーブルによる、昆虫の生態に関する研究記録。1879年に第1巻を刊行して以来、ファーブルは約30年の歳月をかけて全10巻におよぶ大作を書き上げた。

 好奇心と探究心に満ちた『昆虫記』は多くの人々の心をつかみ、意義ある研究としてはもちろん、読み物としても人気を博し、ノーベル文学賞の候補になるまでにいたった。

 今回刊行する『ファーブル昆虫記 名場面集』の2作は、その全10巻の大著から厳選した有名なエピソードを、親しみやすい文章と迫力のある切り絵で紹介。2023年で生誕200年を迎えた今、ファーブルの名著をより気軽に手にとってほしいという2人の著者の思いが、今回「名場面集」という形になった。

 1見開き1エピソードで、各巻16のエピソードを収録。また巻末には登場する昆虫の一覧と、ファーブルの生涯やファーブルが愛した楽園「アルマス」についての解説を掲載している。

■著者2人の情熱から生まれた作品

 作者の奥本大三郎は、フランス文学者・作家。2006年に開館したファーブル昆虫館「虫の詩人の館」の館長をつとめている。小学5年生のときに大人向けに訳された『昆虫記』を読み、いつか自分でわかりやすく翻訳したいと考え、30年にわたって『完訳ファーブル昆虫記』(集英社)の翻訳をし、2017年に全10巻が完結した。

 表紙と挿絵の切り絵を担当したのは今森光彦。里山の自然や昆虫の写真家として数々の著作を刊行しているほか、切り絵作家としても活躍している。今森は奥本と同じくファーブルを愛し、いつか『昆虫記』の世界を切り絵で表現したいと考えていた。

 ファーブル生誕200年のメモリアルイヤーに、本作には注目が集まるはずだ。

■著者紹介

文:奥本大三郎
1944年啓蟄(3月6日)、大阪府生まれ。東京大学文学部仏文学科卒業、同大学院修了。フランス文学者、作家。1981年のデビュー作『虫の宇宙誌』で読売文学賞を受賞。2006年に開館したファーブル昆虫館「虫の詩人の館」の館長をつとめる。小学5年生のときに大人向けに訳された『昆虫記』を読み、いつか自分でわかりやすく翻訳したいと考えた。30年にわたって手がけた『完訳ファーブル昆虫記』(全10巻・20冊 集英社)の翻訳が、2017年に完結。同年、その功績により菊池寛賞を受賞。子どもに向けた作品に『ジュニア版ファーブル昆虫記』『ファーブル先生の昆虫教室』『まんが 星の王子さま』などがある。

切り絵:今森光彦
1954年、滋賀県生まれ。自然と人との関わりをテーマに日本の里山環境を撮影するとともに、熱帯雨林から砂漠まで、広く世界の辺境を訪ねる取材を続けている。また自然の造形を鮮やかに切りとるペーパーカットの作家でもある。毎年夏に、昆虫採集が体験できる「今森光彦 里山昆虫教室」を開いている。木村伊兵衛写真賞、土門拳賞、毎日出版文化賞、産経児童出版文化賞大賞、小学館児童出版文化賞などを受賞。おもな作品に『今森光彦 昆虫記』『世界昆虫記』『昆虫4億年の旅』『今森光彦の昆虫教室』『Aurelian 自然と暮らす切り紙の世界』『おじいちゃんは水のにおいがした』『神様の階段』などがある。

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