『ドラゴンボール』ギニュー特戦隊 インパクト抜群だった強敵は、"スーパー戦隊シリーズ”へのオマージュだった?

『ドラゴンボール』ギニュー特戦隊

 鳥山明の名作漫画『ドラゴンボール』はインパクト抜群の敵キャラのオンパレードだが、フリーザ編の強敵でありながら、なんとも憎めない存在といえばギニュー特戦隊である。

 メンバーは、ギニュー、バータ、グルド、リクーム、ジースの5人によって構成される。キャラクターの名前はすべて乳製品に因んでおり、ギニューは牛乳、リクームはクリーム、といった塩梅だ。こういったネーミングセンスは鳥山明特有のものである。

 さて、鳥山がギニュー特戦隊を生み出すヒントになったものがある。それはなんだろうか。ヒントは5人という人数と、メンバーの特徴的なポーズである。もうおわかりだろう。答えはスーパー戦隊シリーズだ。タイトルまで挙げるとすれば、当時テレビ放送されていた『地球戦隊ファイブマン』であるといわれる。

 『地球戦隊ファイブマン』は兄弟5人の学校の先生が戦隊を結成し、銀帝軍ゾーンと戦うスーパー戦隊シリーズの第14作である。父母との絆、兄弟愛が描かれ、そして全員が学校の先生ということもあり、道徳的なテーマも含まれた内容だった。視聴率は苦戦したと言われるが、戦隊モノの王道を行く作品として評価も高い。

 鳥山も週刊連載で多忙な中、子どもと一緒に戦隊ヒーローを楽しんでいたと思うと、ちょっと微笑ましくなってくる。偉大な漫画家も家庭では子ども思いのお父さんなのだろう。しかし、そういった中でもちゃっかりと漫画のヒントを拾ってくるとは、さすがである。

 そもそも戦隊ヒーローのルーツと言えば、石ノ森章太郎原作の『秘密戦隊ゴレンジャー』だ。5人の個性派ぞろいの戦士がチームを組み、戦うというフォーマットは、ほぼ現代まで継承されている。こうした先人のアイデアを見事にアレンジし、自作に取り込む鳥山明のセンスは見事というほかないだろう。

 鳥山は『Dr.スランプ』の作中でも、『鉄腕アトム』『ウルトラマン』『ゴジラ』などのモチーフを多く登場させている。日本漫画界の最高峰である鳥山明は、独自の作品を生み出す天才であるとともに、アレンジの達人でもあったのだ。

 フリーザ編はクリリンなど主要なキャラクターが死ぬうえ、シリアスなストーリー展開が続き、ギャグが全体的に抑えられている。そんな中で、ギニュー特戦隊は鳥山のギャグ漫画的な要素が発揮された、実に魅力的な連中ばかりである。特に彼らがキメる「スペシャルファイティングポーズ」などは、なんともネーミングがダサかっこよく、印象的ではないか。こういう遊び心とセンスこそが鳥山の真骨頂といえるのではないだろうか。

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