【漫画】絵を描く上でAIにできないこととは? “過程の楽しさ”を伝えるSNS漫画が深い
ーー人間に近づけないルミカちゃんと彼女を人間らしくさせたい博士の対比など、人間とロボットについて様々なことを考えた作品でした。本作を創作したきっかけは?
猫オルガン:絵を描く人には2つのタイプがあると思っており、絵が完成して楽しいと思う人、絵を描いている最中が楽しいと思う人がいると考えています。どちらも素晴らしいことだと思いますし、絵が完成するまでの苦労や絵を描いている楽しさなど、どちらも絵を描く過程の存在があるからこそ絵を描く楽しさを味わえるのだと思います。
そんななか絵を描く過程をショートカットしてしまうと、絵を描くことの楽しさを味わえなくなってしまうのではないかと思い、本作を創作しました。
ーーサホちゃんは絵を描いている最中に楽しさを感じていた人物であったかと思います。
猫オルガン:私自身も絵を描いていて楽しいと思うタイプですね。私は旅が好きなのですが、旅の魅力なのは目的地ではなく旅路にあると思っています。わざとゆっくりと進む交通機関を用いたり、どこかで途中下車して何か食べたりするのが好きで。
自分の感じる旅の魅力を絵の世界に移し替えたらどんな話になるかと考えながら本作を描きました。
ーールミカちゃんが絵を描くことに苦労するサホちゃんをうらやましく思うシーンが印象に残っています。
猫オルガン:このシーンのサホちゃんの表情は何度も書き直しました。ルミカちゃんはサホちゃんの描いた絵ではなく、絵を描くことに夢中になっていることにうらやましさを覚えているためです。
楽しそうでもあり、ちょっと苦しそうにも見える。そんな表情になるようにサホちゃんを描きました。このシーンから逆算して本作の物語をつくったという背景もあります。
ーーサホちゃんやルミカちゃん、絵の上手い小学生など、作中では様々な画風のイラストが登場していました。
猫オルガン:子どもらしい絵、AIが描いた絵といった画風に縛りのあるコマは描くときにすごく苦労します。どうすれば子どもが描いたような絵になるか、AIがコピーしたような絵になるかと考える必要があるため、プロットをつくるときや凝った背景を描くときよりもむずしさを感じています。
ーールミカちゃんの着る服に「Electlic Sheep」と描いた理由は?
猫オルガン:登場人物の着る服に変なことを描くのが好きで。そのために変な言葉をメモした一覧表をつくってあります。その一覧表を見つつ「この漫画であればこんなテーマだから、この言葉が描かれた服を着せれば作品に合うな」と考えながら漫画を描いています。
『こちら葛飾区亀有公園前派出所(以下、こち亀)』が好きなのですが、背景として描かれる本のタイトルとかお店の名前など、お話もさることながら作品の細部を読むのがすごく好きです。自分も漫画を描くなかで『こち亀』のような遊びをしたいと思い、服に限らず本のタイトルなどをメモして作品を描くときの参考にしています。
ーー漫画を描きはじめたきっかけを教えてください。
猫オルガン:本作のサホちゃんのように、漫画を描くことへの憧れがつよかったのだと思います。子どものころに読んでいた『こち亀』や『ドラえもん』などの漫画が大好きで、自分でもこんな漫画を描けたらいいなと思ってきました。子どものころに憧れていた作品の多くは短編作品であり、とくに面白い短編を描きたいという思いがつよかったです。
絵を描くことが好きで漫画を描きはじめた方も多いと思いますが、私の場合は物語をつくりたいと思ったことから漫画を描きはじめました。子どものころから物語をつくることが好きで、絵の好きな人が自然と落書きをするかのように、いつもお話の断片をつくっていました。
そんな自分の物語を作品にすることを考えたときに漫画が最も向いているんじゃないかと思ったのです。文章を書くのが得意だったら小説家を目指していたかもしれませんし、映像をつくることが好きだったら映画監督を目指していたかもしれません。
ーー今後の目標を教えてください。
猫オルガン:物語を作品にするために絵を描くようになった人間なので、もっと絵をうまくなりたいという気持ちがあります。これまで短編作品を多く描いてきたので長編作品にもチャレンジしてみたいです。