【漫画】新橋駅跡地で発掘のバイト、出てきたものは? 珍しい体験を描いたSNS漫画が話題
漫画「ビルの谷間で発掘のバイトしたけど縄文時代まで行きつかなかった話」を読む
ーー漫画に描いた発掘のバイトに参加されたのは随分と前のことだそうですが、今になって漫画にしようと思った理由をお聞かせください。
さいとう邦子(以下さいとう):私の高校時代の友人に考古学者がいて、その人と一緒に発掘をテーマにしたお仕事漫画を作ろうとしていました。しかし、なかなか時間が合わなくて作品として世に送り出せずにいました。そんなとき、発掘関連で過去に発掘バイトしたのを思い出して描いてみようと思ったんです。
オチがある話ではないし、どう終着させるかも決まっていませんでしたが、こういうバイトがあるということと、猫集会に行った人と出会ったことを入れたいな、と考えました。デジタルで漫画を描く練習にもなるし、去年の11月から描き始めました。
ーー発掘は元新橋駅の下だったんですね。
さいとう:そう、今の汐留です。私は縄文時代が好きなので、掘っていれば縄文時代に辿り着くかも、と期待したのですが、あそこは江戸時代の前は海でした。
ーー調査できるのは建物が取り壊された場所だけなんですよね。調査できていない場所の方が圧倒的に多いのだと思ったら急にロマンを感じました。実は自分の家の下に歴史の常識を覆す大発見が埋まっているかもしれない、なんて考えると楽しいですね。
さいとう:そうそう。掘るチャンスがないだけでなく、あったとしても、もう残っていない可能性もあります。わからないんですよね。
ーーそういえば、漫画に出てくるのは個性豊かな人たちばかりですね。
さいとう:面白い人が多かったです。当時はバブルの後ぐらいで、フリーターと呼ばれる人たちが沢山いました。いろんなバイトを経験してから就職しようと考える人たちも少なくなかったと思います。発掘のバイトに来るような人は普通のルートで大学進学して就職するタイプではなかった印象です。モラトリアムの人や、こういう仕事に憧れていたけれど若い頃にはできなかったという年配の人などがいました。発掘バイトを転々としている人たちもいて、ここが終わったら次はxxに移動する、なんて言っていて。
ーーそういう暮らしでもなんとかなる時代だったのかもしれませんね。ところで、この漫画のラストって不思議な趣がありませんか。私は風景が変化していくのを見ると、なんとなく取り残された気持ちになって寂しさを覚えたり、焦ったりするのですが、そういった感じはありませんよね。先生は、変化をどう受け止めていますか。
さいとう:悲しいというより不思議に思っているのかもしれません。私の生家も、これまでに暮らしてきたアパートも取り壊されています。でも、私はその場所を強烈に覚えてるんですよね。その、もう存在しないものを自分は覚えている、という事実に不思議さを感じています。それと、時代の移ろいをタイムラプスを見ている感覚で捉えているというのもあると思います。
汐留も、私が掘っていたのは仙台藩ですが、その前には元新橋駅があったんですよね。元新橋の駅に馴染みがあった人は、その景色を懐かしむけれど、私はその景色を見ていないので、同じ場所を見ても違う景色を懐かしむのだと思います。
ーーなるほど。私は自分の目に映るものだけで判断して悲しいとか嬉しいと思っていたようです。これからは土地を見る目が変化しそう。それに発掘の仕事にも興味が出てきました。
さいとう:もし発掘のバイトを考えているのなら、夏場よりも冬場の方がオススメです。地面を深く掘るので意外と寒くないんです。非日常的ですし、とても面白いですよ。
ーーでは最後に今後の活動についてお聞かせください。
さいとう:普段はホラーファンタジー系の作品が多いのです。昨年夏には、かずはしとも、白井幸子、さいとう邦子の3人レーベル「 #童話シリーズ Bitter or Sweet」の電子配信を始めました。今年はこの続刊と別に新作も描きたいです。発掘お仕事まんがも早く形にできればいいなと思ってます!