ガーシーはいかにしてドバイで仲間を作ったのかーー元・朝日新聞記者のルポの問いかけ

ガーシー一味はドバイでなにをしていた?

 著者の伊藤喜之は、そんなガーシーを「トリックスター」と形容している。トリックスターは、「神話や民間伝承のなかでトリック(詐術)を駆使するいたずら者として活躍する人物や動物。ときには愚かな失敗をし、みずからを破滅に追いやることもあるが、詐術的知恵や身体的敏捷性をもって神や王など秩序の体現者を愚弄し、世界(社会)秩序を混乱・破壊させる。一方、一般の人間界に知恵や道具をもたらす文化英雄としての役割も果し、両義的な性格をもつ」(同書に引用されたブリタニカ国際大百科事典の解説)とのことだ。そして伊藤は、ガーシーが「世の中を引っ掻き回す」存在だとしながら、「一連の暴露の結果として残ったのが、ただの混乱や破壊だけだったのかといえば、それも違うだろう」として、港区界隈での芸能人の遊び方が変わったこと、「リモートでは国会議員は職責を果たせないのか」という議論を呼んだことには一定の意義があったと見ている。

 何より、過去に不始末を犯したものが二度と這い上がることができないような現在の日本のあり方に疑問を呈し、思いもよらぬ形で復活を遂げようとしたガーシー一味の一連の行動は、改めて昨今の風潮や既存メディアのあり方を問い直すものだったと、伊藤は結んでいる。

 警視庁は今後、ICPO(国際刑事警察機構)を通じ、ガーシーを国際手配する方針だという。ガーシー騒動の一端を理解する上でも、本書は一読の価値があるルポルタージュだといえよう。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「社会」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる