【漫画】「カツオの漬け丼」がめちゃくちゃ美味しそう! 夫婦で食事を作る漫画が幸せいっぱい

ーー「夫婦がカツオの漬け丼をつくって食べる話」は、イースト・プレスのマトグロットで連載されている『盛り付け上手な円山さん』の一部ですよね。在宅ワーカーの食生活を描こうと思ったきっかけをお聞かせください。

蟻子:この連載は、最初、夫が作ったご飯を夫婦で食べる内容で依頼をいただきました。しかし、私としては、片方が作って、ただ待っているだけの片方が食べる関係性があまり想像できなかったのです。妻が働きに出ていて、帰ってきたらご飯が用意されているという設定も考えたのですが、あまりしっくりこなくて……。それで、自分も在宅ワークですし、周囲にも夫婦共に在宅でどちらも料理をする家庭があったので、一緒に食事に取り組む場面なら描きやすそうだと考えて『盛り付け上手な円山さん』ができました。

ーーなぜ片方が作って片方が食べる関係性にピンとこなかったのでしょう?  世の中にはそういう家庭が少なくないですよね。

蟻子:女性が作って男性が待っている話だと特別なトピックじゃないから漫画になりにくそうというのはわかります。では、男女逆だと漫画として成立するのか、と考えたときに、それも違和感があるなと思ったんです。そもそも、作ってもらったものを「いただきます。美味しいです」といって食べるだけの姿勢でいるのは、ジェンダーに関係なく自分には違和感があるのだと思います。私は母と二人暮らしの期間が長かったのですが、どちらかが作る日もあれば、一緒に作る日もありました。料理はシェアする部分が多いと感じています。

ーー『盛り付け上手の円山さん』は夫婦どちらも食事の用意を楽しんでいますが、家事分担の描写で意識していることなどがあるのでしょうか。

蟻子:この漫画に出てくる夫婦の食に対するモチベーションを同じくらいにするのを意識しました。共同生活をしていても、大人なら男女関係なく自立して生活できるスキルは持っていると思うのです。だけど、お互いの得意を尊重すれば、寄り合って生きるメリットもある。円山夫婦を描くにあたって、家事の分担というより、食への熱量を大切にしました。というのも、質問の中で「食事の用意」と言いましたが、食事の用意って、料理を作るだけではないんですよね。献立を考え、買い出しに行き、料理をして食べて後片付けもする。予算や食材のやりくりだってやらないといけません。この夫婦に関していえば、料理と後片付け以外は共同作業なんだと思うんです。それは食事中に感想を言い合って、次のアイディアやモチベーションにつなげることも含まれます。

 食事中に感想をいうことは、食べている側から作っている側へのリップサービスではないと思うのです。美味しいね、次はこうしたいね、といった感想は、食へのモチベーションになります。このような次につなげるという行為も含めて「食事の用意」では。一緒に食卓を作るって、そういうことなんだと思います。

ーー蟻子さんにとって、食べることや料理をすることって何ですか?

蟻子:私にとって、それらは日々のトライアンドエラーでしょうか。ご飯が楽しい日、そうではない日、忙しくてそれどころではない日など色んな毎日がある中で、今日はどうやって体を満たそうかと試行錯誤する行為が食べることや、料理をすることなのかな、と思います。

 こういう試みが意識的になったのは、私自身、20Kgのダイエットをしたのがきっかけだったと思います。その体験は『20Kgヤセてぽっちゃり人生脱出しました。脱ぽちゃ。』という漫画で描いているのですが、ダイエット前はバランスなど気にせず食べたいものを食べていました。記録するダイエットを通して、自分がどんなものを食べているのか、どんな食べ物で体が形成されているのかわかったんです。

 そのうち食べたら体重が増えるんだと思って、食べ物が敵に見えてきたりして。低カロリー食品にポン酢をかけるようなものを食べていました。でも虚しくて……。それで、食事を楽しもうと思って突き詰めていったら旬のものに行き着いたんです。

 もともと料理が嫌いじゃなかったこともあり、旬のものを美味しく食べる研究をしたり、じっくり準備したりすると、満足度が上がっていきました。以前は、このラーメンの次は何のラーメンを食べよう、なんて考えていたのに、今は目の前の食事に集中できています。

ーーでは、『盛り付け上手な円山さん』のテーマも食ですが、ダイエット経験がいかされた献立が取り上げられているのですか?

蟻子:そうですね。そして、連載時の旬の食材を使うというがひとつのコンセプトになって
います。私は、ダイエットをしていた頃からの習慣で食卓の写真を撮っているんです。また、散歩中に見た景色や育てている植物も撮影して、フォルダー分けしているので、季節ごとの旬の食べ物がわかるようになっています。このフォルダーを見ながら、これは美味しかったな、こうすればもっと美味しくなるな、なんて考えつつ、漫画に登場させたい献立を選んでいます。「夫婦がマグロの漬け丼を作って食べる話」として紹介した、しらすのトーストは私が食べていたものです。とても美味しいので描きたいと思いました。

ーー『盛り付け上手な円山さん』に登場する食べ物はどれもこれも本当に美味しそうなんですよね。味も想像できそうだから作りたくなってきます。マグロの漬け丼なんてまさにそうでした。食に無頓着でいるのが勿体無いとすら感じてきますね。

蟻子:食べることは皆さんに共通していますが、環境やその日の心情で変わってくるでしょう。毎日美味しいと感じるのは難しいことかもしれませんが、食べることを楽しむためのモチベーションの手伝いになったら嬉しいですね。

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