人はなぜゴキブリを嫌うのか? 話題の一冊『ゴキブリ研究はじめました』から考える、苦手克服のメカニズム
ゴキブリを嫌いになる理由を考える
筆者が本書を手に取ったのは、人がゴキブリを嫌いになる理由を知りたかったからだ。著者は、自分がゴキブリを嫌いになった理由までは掘り下げていないが、人がゴキブリを嫌いになるのは、家に出没するゴキブリの習性や、周囲の大人の反応にあるのではないか、と考えている。
ただ、筆者の経験としては、クロゴキブリ同様に、衛生的でなく素早く動き、室内に入り込むゴキブリがいる国でも、「飛んできたら嫌だけどそこにいる程度なら問題はない。好きとまではいかなくても怖いとは思わない」といった意見が多く、日本のように怖くて「ゴキブリという文字を見るのすら嫌」とまでいう人は稀に感じている。下水などに生息するから病原菌の媒介者になるという理由で嫌がる人はいても、声をあげたり騒いだりする人も見たことがない。それは、ゴキブリを目にする機会が多すぎて、慣れてしまっている部分もあるだろう。
反対にいえば、叫んだり逃げたりといった過度なリアクションをとる日本人が多いのは、日本が清潔ゆえにゴキブリがレアキャラで謎めいているからではないだろうか。つまり、清潔にすればするほど、ゴキブリ恐怖症を助長させているとも考えられるかもしれない。だとすると、なんという皮肉だろうか。
本書は、ゴキブリ研究に関する本だが、決して難しかったり、マニアックだったり、ゲテモノ好きに限定するニッチなものではない。むしろ、前述したように、苦手克服に関する作品であり、嫌いなところにビジネスチャンスを見出すというビジネス書的な一面もあるだろう。
今年の夏は、『「ゴキブリ嫌い」だったけど ゴキブリ研究はじめました』だけでなく、柳澤氏による『ゴキブリハンドブック』(新書 8/1発売)も発売される。
『ゴキ研』には写真は一切掲載されておらず、イラストのみなので、もう一歩踏み込んだゴキブリワールドを知りたければ『ゴキブリハンドブック』を手に取れば良いわけだ。それだけなく、同氏は今年6月23日にリニューアル発売された『学研の図鑑LIVE 昆虫』(学研)でもゴキブリの項目を担当されている。緑色や青色に輝くゴキブリの写真を見ていると、ゴキブリの定義は触覚とギザギザした足だけなのでは、と思えてくる。
筆者は、怖いものが減ると生きやすくなる、と思っている。ゴキブリへの苦手意識をどうにかしたいと思っていたら、まずは『「ゴキブリ嫌い」だったけど ゴキブリ研究はじめました』を手に取ってみてほしい。